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「蒔田さんがしつこおてなあ。
場末のキャバレーの歌い手なんかて、
なんぼ断っても、
いっぺんでええから、聴きに来てくれて。
けど、君を見つけられて幸運やったわ。
あん人のおかげやなあ」
驚きなんてもんやなかった。
蒔田のおっちゃんのこと、
俺は、殺しても殺したりひん思ってた。
罰が下ったように、
すぐ心臓患って、
あっという間に天国行ってもうたから、
殺意はうやむやになっていったけど。
あの人が裏で俺を売り込んでくれとったて・・・
すぐには信じられへん。
大毅兄ちゃんが久々に心から幸せそうな顔をしてる。
庭の畑の野菜をとりながら、
俺を振り返って。
「ともは、やっぱりすごいなあ。
兄ちゃんの自慢や。
ほんま鼻が高いわ」
照りつける太陽より眩しい笑顔で、
縁側の俺を振り返るねん。
こうしてると昔の兄ちゃんに戻ったみたいや。
大毅兄ちゃんと二人で作った、ご馳走。
お造りに煮物、
味噌汁とサラダ。
それに金色に光る卵焼きまで。
昔はすいとんぐらいしか食べるもんなくて、
料理の必要もなかったなあ。
その日暮らしでいつも飢えてたあの頃のこと、
ふと思い出す。
「とも。
今日はお祝いやから。
たくさん召し上がれ」
大兄ちゃんは、
自分は食べずに、
俺にばっかり勧めるねん。
戦時中やった子供の頃から、
いつもそうやねん。
なんとかその日食べるものに困らんなった今も、
その身体は痩せ細って華奢なまんま。
「大兄ちゃん、また食欲ないん？
兄ちゃんも食べなあかんで？」
「俺はええん。
ともが幸せそうに食べるんを見てるんが嬉しいねん」
「あかん。
ちゃんと食べんと、
身体壊してまう」
無理矢理、箸で煮物つまんで、
兄ちゃんの口元に運んだった。
一口噛みしめてから。
「ともも生意気言うようになってんな」
そう言うて笑う。
今日はほんまに、
おかしいなる前の、
賢おて優しい、
俺の自慢の大毅兄ちゃん。
今、この一瞬は、狂った痴呆の人形なんかやない。
「そら、俺かて、もう２１の大人の男やで」
大人になってから、
余計に分かれへんなったことがある。
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てんよ(プロフ) - 君がため。完結お疲れ様でした！最後、ひょっとして赤くん…と悲しい結末も想像したりもしましたが、無事に2人が結ばれてよかったです笑 そして次は緑赤なのですね！続きも楽しみにしています〜(//∇//) (2021年8月22日 15時) (
レス) id: aa8042bdaf (このIDを非表示/違反報告)
じんじん(プロフ) - いっぱい泣いてしまいました！正直時代物だと少し構えてしまう部分はあったのですが、fool様の作品は続きが気になり、一気に読んでしまいました！ (2021年8月21日 4時) (レス) id: b773bba464 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - 緑くんが幸せになって嬉しいのに完結が寂しい、、時代物初でしたが、世界観が素敵でした！緑くんが儚くて美しすぎて、メロメロでした！！赤緑大好き！緑くんを溺愛する赤くん、最高です！！私もシルエットに並びました！これからもfoolさんのお話楽しみにしてます！！ (2021年8月18日 20時) (レス) id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
siman(プロフ) - 完結しちゃったんですね涙！もっと読んでいたかったというのが本音です。私の中でも特別大好きな作品になりました！この先の二人もみたい！と密かに思っていたりします、でも本当にありがとうございました！あ〜幸せになって良かったです！ (2021年8月18日 17時) (レス) id: ee8c46c09c (このIDを非表示/違反報告)
mom(プロフ) - 幸せをありがとうございました！情景や登場人物の表情や心情が鮮やかで、そのお陰か特に緑くんの健気さと美しさが際立っていたように思います。気が向いた時でいいので、呉服屋の若旦那になった緑くんと赤さんの平和で甘い日常を見たいな…なんて。君がためロスです！笑 (2021年8月18日 16時) (レス) id: 9127d19116 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool
| 作成日時：2021年7月31日 20時
