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「智洋坊ちゃん！
なんという事を・・・」
佐久治さんの目が潤んではる。
「申し訳ありませんでした。
大毅兄様をお連れして下さい。
僕は・・・
ここで待っています」
今、離れたら、
大兄様はもう二度と、
ここには帰って来られへんかもしれへん。
身を引きちぎられるような気持ちになる。
「とも。
なら一緒に帰ろう。
きちんと話せば、お父様も分かってくれるはずや・・・」
大毅兄様が僕の手を取って、
きつく握りしめてくれはった。
「いいえ。
僕はここで待ちます。
大兄様が帰って来はるのを」
「・・・分かった。
必ず戻るから。
静子さんにきちんと離縁してもろうて来る。
それがずっと気がかりやったんは、
ほんまなんや・・・」
大兄様は、
目上の方に逆らったり、
ましてや、
お父様に反目するような、
そんなことをするような方やなかった。
義理や恩情を誰よりも大切にされる方やったのに・・・
僕のために、
こんな生き方を選んでしまわれた。
やけどもう、
大毅兄様と離れて生きていくなんて、
考えられへんから・・・
「とも、すぐに戻るから。
ここで待っておいて欲しい。
きちんと話をして、
分かってもらって、
迎えに来るから」
大毅兄様が僕の髪に触れはって・・・
それから、
その指は、
僕の着物の襟元、
開襟シャツポケットにある、
万年筆に落ちていく。
大毅兄様が買うてくれたこの万年筆は、
僕のお守り。
きっと大丈夫や。
「とも、気をつけるんやで。
すぐに戻るからな」
「大兄様、お待ちしております」
小雨の降る中、
大毅兄様は二人で暮らしたこの家を出て行かれた。
着物の背中が小さな橋を渡りきって、
やがて見えなくなっても。
僕はいつまでもその場から動かれへんかった・・・
大兄様はなかなかこちらには戻ってこられへんかった。
今日でふた月になる。
覚悟はしておったものの、
やはり侘しさが胸に染みる。
お菓子やお金の入ったお手紙は、
３、４日に一度送って下さる。
その便りだけを心の綱にして、生きておったのに・・・
ここ１週間は、お便りもない。
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siman(プロフ) - 物語が進むほど運命って残酷だなと思ってしまいます、この時代を生きていないのに、昔の色恋ごとってこんな感じだったのかしらと胸が苦しいです！でも二人に幸せがきっとくると信じています！二人がきっと交わるであろう運命が楽しみです！ (2021年7月30日 22時) (
レス) id: ee8c46c09c (このIDを非表示/違反報告)
りっつ(プロフ) - 女形の緑ちゃんだなんて…なんと贅沢な…夢のような世界…ありがとうございます！！！ (2021年7月21日 21時) (レス) id: d038e49da9 (このIDを非表示/違反報告)
mom(プロフ) - お忙しい中更新ありがとうございます(泣)寝る前に開いたら、更新通知にタイトルがあって、嬉しくてビクってなりましたw 幸せな気持ちのまま眠りにつけます。あぁ、どうしてこんなに赤さんはかっこよくて緑くんは可愛いのでしょうか。。2億点満点です！ (2021年7月18日 21時) (レス) id: 9127d19116 (このIDを非表示/違反報告)
mom(プロフ) - 今、1番更新を楽しみにしている読物の1つが君がためです。時代物の語り口が好きなのですが、緑くんの純粋さ、礼儀正しさ、素直さ、奥ゆかしい可愛さが時代物とマッチしていて、読みやすいし、キュンキュンします。時代の香りと2人の恋の匂いがたって、最高の物語です！ (2021年7月18日 18時) (レス) id: 9127d19116 (このIDを非表示/違反報告)
siman(プロフ) - 時代物！新鮮ですが、私は好きです！時代物だと、より一層赤くんの男らしさや芯の強さが際立つような気がします！一言でいうとかっこいい！続きを楽しみにしています！ (2021年7月15日 21時) (レス) id: ee8c46c09c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool
| 作成日時：2021年7月12日 16時
