君がため。６

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うとうとしただけで、
朝が来て・・・


目を覚ましたら、
忠義さんが、
私の事を覗き込んでおられた。


「おはよう。
目が覚めた？」

夫である忠義さんよりも後に起きてしまうなんて。

私はなんという、失態を。


「おはようございます。
ごめんなさい。
先に起きられずに」


慌てて起き上がったものの、
何もつけてない事に気付いて、
慌ててお布団を被る。


「何を慌ててるん？
昨日は疲れたやろ？
朝食が来るまでゆっくりしておけばええのに」


忠義さんは昨夜の余韻が残るような、
そんな甘ったるい声でそうおっしゃって。


「そんなわけにはいきません。
お布団もたたまないと」


敷布はあまりにもぐしゃぐしゃになって、
昨夜どんな事があったんか、

旅籠の仲居さんに、
これでは何もかも分かってしまう。


「そんなん、仲居さんに任せたらええやんか」


忠義さんは意に介さへんというようにおっしゃって、背中から私の肩に浴衣をかけてくれはって、

そのまま、きつく抱いて下さった。


私の頬に口付けをしながら。

「このまま大阪へ行こう。
手紙のやり取りだけ続いておった幼馴染がな、
向こうで印刷所の事務方の仕事を見つけてくれたんや。
狭い間借りやけど、
住むところも世話してくれるて。
二人で生きていこうな」

穏やかな声でそんな事をおっしゃる。


まさか、こんなきちんとした将来の青写真を、
忠義さんが描いてはるとは、

ただただ、驚くばかりやった。


愛しいお方と二人して、
忠義さんの生まれた土地で暮らせる。

この上ない幸せやと思う。


やけど・・・


それは絶対に間違うてる。


「そんな、いけません。
忠義さんはお医者様になられないと。
兄上様の、義顕さんの病気は、
どなたが治すんですか」


「ドイツには学友の安田いう奴が行くねん。
Aも知ってるやろ？
よう翠茶房で僕をからかうてた。
あいつに、ドイツでよう学んで、
帰国後に僕の兄を助けてくれと、
重々頼んでおいたから大丈夫や」

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