君がため。６

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私たち姉妹のことを、
ご近所の皆さんが良くは思ってはらへんのは、
いやでも耳に入って、知っておったけど・・・


「肺病とはまた気色の悪い。
近寄うたら、うつるやないか。
あれは血筋やのうて、
伝染するて噂やで。
従順に夫に支えることも出来ひん、
ふしだらなおなごやから、
天罰が下ったんやな」


その言葉を聞いて、
どうしても許されへんかった。


「康子ちゃんは肺病ではありません。
お産の日立ちが少し悪いだけです。
それにふしだらやなんて。
あの子は純粋なええ子です」


思わずそう口走ってた。


相手は突然面と向かってきた私に、
ほんの少しだけ驚いたけど、
すぐに下卑た笑顔を浮かべて。

私に詰め寄ってきはる。


「知らんのか？
あの子は、
夫をたてるどころか、
毛嫌いして、
挙げ句の果てに使用人の若い男と道徳を犯すような恋路に落ちて、
追い出されたて」


「そんな、そんなはずはありません」


声が乾いて、膝ががくがく震えた。


康子ちゃんは、
何を聞いても、

私がいけなかったんです、
天罰が下ったんです、

そればかりを繰り返してる。


「姦通罪にかけんと済ませてやって、
嶋野の若旦那はお心がほんまに広いわ。
あんたも同じようなことして、
追い出されたんとちゃうか？
ほんまにいやらしいあばずれ姉妹や。
この町から出てって欲しいもんや」


追い打ちをかけるように吐き捨てた後、
立ってられへんほど動揺してる私を、
その方が通りの溝の方へ突き飛ばした。


人の悪意をこれほど感じたことはない。


転んで擦りむいた足首。


立ち上がられへん私の目の前に差し出されたのは、
隆平さんの大きな掌やった。


その手を取ろうとした時、
隆平さんの肩を、
片方の方がぐいっと掴んで、
私から引き離しはった。


「丸山呉服屋の坊々か。
あんたのことも噂になってるで。
酒蔵の娘さんとの縁談断ったくせに、
出戻りのふしだらな女にうつつ抜かしてるて。
このあばずれがどんな手管で男を誘い込むんか、
一回、試してみたいもんや」

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