君がため。６

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それから半年が経って、
また祇園御霊会の頃になった。


義顕さんのお身体は今は落ち着いてはるけど、
いつ何が起こるかは分からへんと、
お医者様には釘を刺されてる。


義顕さんとさつきちゃんの本心を知ったあの春の日から、私は迷い続けてる。


私はここにおってはならんと・・・

一刻の猶予ももうない気がするのに、

義顕さんから私を離縁してもらえるように、
何度かお願いしたものの、
聞き入れてはもらわれへんまんま。


時間だけが無情に流れていく。



明治３５年 水無月２日。

義顕さんと私の３回目の結婚記念日。


祇園御霊会の山鉾巡行の物見のために、


母上様が、
今年は私のために浴衣を新調して、
離れまで届けに来て下さった。


「祝言の時のように、
二人で旅籠にでも泊まってきはったら？
気分が変われば、
お子を授かる事もあると聞くし・・・」


そうおっしゃる。


「そうですね」


義顕さんは穏やかな笑顔でお答えになったけど、
私の胸は、懺悔と自責の念で、押しつぶされそうや。


母上様が離れを出られてから、
思わず、気持ちが溢れて、
義顕さんの浴衣の袖をきつく握りしめてしもた。


「義顕さん、お願いします。
祇園のお祭りには、
さつきちゃんとお出かけになって下さい。
旅籠にお泊まりになるのも、
さつきちゃんと・・・
はようにお子様をお作り下さい。
そうやないと私・・・」


「Aさん、
前にも言うたでしょう。
僕は病気が治らん限り、
子を持つつもりはないと」


「そんなのいけません。
大倉家の跡取りは義顕さんのお子さんやて、
ご両親も忠義さんも望んでおられます。
それに、さつきちゃんの気持ちもお考え下さい。
このままやったら、
子供も持たれへんまま、
行かず後家やて後ろ指さされるようになってしまいます」


「Aさんはどうしはるいうんですか？」


「義顕さんは、お優しいのが過ぎるんです。
私は平気です。
実家に帰って、忠義さんの帰りを待ちます。
子供が３年もない今となれば、
ご両親も離縁を反対はされへんでしょう」

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