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忠義さんが、
銀の針金を開いて、
私の襟元につけて下さった。
長い指が、私の首筋に触れて、
胸が早鐘みたいに打ち出す。
とても長い時間やったような、
ほんのひとときやったような、
不思議な感覚がした。
忠義さんが私を優しい目で見つめて。
「・・・よう似合うてる」
そう言うてくれはった。
「嬉しいです。
ありがとうございます」
そうお答えしたら、
忠義さんは綺麗な目を伏せた。
そうして、私の手をそっと取って・・・
「兄はもう長ないと、
父は思うてるんです。
やから結婚を急いで、
一刻もはよう兄の子供をと思うてられる。
ようはしてもろてるけど、
僕はほんまの子供やないから。
父は大倉家の跡取りは、
どうしても兄の子供にと、
願うてはるんやと思う。
そんな時にこの縁談が湧いて起こって、
父には救いの神のように感じたんやと思う」
切ないぐらいの静かな声で、
そうおっしゃった。
こんなええ縁談話が、
うちのような没落した武家に来るんは、
おかしいとは思うてたけど・・・
そういう事情があったんやと、
得心がいった。
俯いてはった忠義さんが、
不意に私をまっすぐに見つめた。
「Aさん、僕と逃げてくれませんか」
その目は真剣で、
戯れ言をおっしゃってるんやないということは、
苦しいほどに感じた。
「７月にはドイツに渡るようにと、
国から命じられて、
国費留学生として、
向こうの病院で働きながら学ぶ事になりました。
出来たら、Aさんにも一緒に来て欲しい・・・」
「でも、忠義さんのお父上は・・・」
「父には恩を仇で返すと、
きっと生涯恨まれるでしょう。
でも僕は・・・
Aさんのことだけは諦めとうない。
生まれて初めて、
こないにも女の人に惹かれた・・・」
「忠義さん・・・」
何も答えずとも、
私の気持ちなど、
忠義さんにはきっと見透かされてる。
愛される喜びに、
胸が溢れて、
忠義さんを見つめるこの目から、
この体から全てがこぼれ落ちてしもて・・・
自分ではどうしようもない。
「外国で苦労させるかもしれへん。
僕はまだ学生やし、
一人前でもないのに、
こんなこと言うて、
正気やないて思われても仕方ない。
けど、本気や・・・」
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りり(プロフ) - 大倉くんver.確かに1番甘々ですね♪彼の風雅な佇まいがそうさせるのかな？でもいくら甘々と言えど状況は辛すぎる(＞＜)移行後も楽しみです↑◎あと専属マネージャーも！すばるくんの照れた顔想像しただけでもう…(/ω＼) でも現状個人的にヤスくんに天秤傾いてますが笑 (2018年3月6日 23時) (
レス) id: ac3afc1999 (このIDを非表示/違反報告)
かりん - はじめまして。君がためシリーズ、どの作品も読み応えがあって感動しました。錦戸さんとのシリーズが私の中で凄くヒットしました。大倉くんとのシリーズも楽しみにしています。春休みなので一気に読む時間があって嬉しいです。これからも連載楽しみにしています！ (2018年3月6日 2時) (レス) id: 14a99e8554 (このIDを非表示/違反報告)
めちゃ(プロフ) - 初めまして、君がためシリーズはすばるくんのが一番大好きなのですが、大倉くんのお話は地元な為なんだか外を歩くと主人公さんと大倉くんの姿を思い浮かべています。更新楽しみにしています。 (2018年2月28日 1時) (レス) id: a17ea7e194 (このIDを非表示/違反報告)
rin - これからも更新楽しみにしています！ (2018年2月24日 15時) (レス) id: 7ecee3ec5b (このIDを非表示/違反報告)
rin - はじめまして！君がため。シリーズが大好きでずっと読んでいました。耳が聴こえないとか、脚が不自由とか、ハンデがある人はこの時代はどうしていたのかなと思って、foolさんの書く小説で読んでみたいなと思っていたのですが、今回が最終章なんですね(;_:) (2018年2月24日 15時) (レス) id: 7ecee3ec5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2018年2月21日 14時
