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秋が深なるのを待たずに、
A姉ちゃんは、
俺を一人残して、
蒔田の用意した小綺麗な部屋に引っ越して行った。
贅沢な暮らしをさせてもろて。
ほんまにそれでええん？
魂まで売らんて。
言うたやんか。
なあ、A姉ちゃん。
A。
俺が愛した最初の女。
悲しい。寂しい。
・・・虚しい。
そんな気持ちが行ったり来たりする、
溺れそうな、毎日の中で。
いつか、歌手になって、
自分の作った歌で、
自分の声で、
生きる希望を失った誰かを、
ひとときでもええ、笑顔に出来たら。
誰より幸せになる権利があるのに、
神様に見放された、
A姉ちゃんを、
とびきりの笑顔に・・・
そんな夢だけを光に、
糸を手繰り寄せるように生きてきた。
あの忌まわしい事件から８年。
A姉ちゃんは２８、
俺は２４。
夏の初め。
変わらず、俺は、
キャバレーで、
ギターを弾いて、歌ってる。
仕事終わりに、
晴美ママが、
奥のでっかい長椅子に腰掛けて、
「Aちゃんにも、
そろそろええ人、紹介してあげましょう」
はしゃいで言うてはんのが聞こえてきて。
慌てて、俺もその場に駆けつけた。
「私なんか。
お嫁にもろてもらえるようなそんなええもんや、
ありません」
A姉ちゃんが、
卑下して、首を横に振る。
もし、戦争なんてなくて、
もし、家族が生きてたら。
こんな人生になるはずもなかったのに・・・
「そんな謙遜することないわ。
Aちゃんはベッピンさんやし。
いくらでもお話はあるから。
会うだけでも」
そう言ってママが見せた見合い写真は、
どう見ても、初婚ではない、
頭の薄くなった、おっちゃんや、
戦争で手足なくして、
不自由してはる人。
思わず、見合い写真を伏せて。
「A姉ちゃんは、
まだ結婚なんかしいひん」
割り込んで、口走ってた。
「章大、邪魔せんといて。
あんたのお姉ちゃん、
もうすぐ２８になるんよ？
立派ないき遅れやわ」
晴美ママかって、出戻りのくせに、
えらっそうな態度や。
「行き遅れても、ええねん。
俺が・・・」
勢いに任せて、そこまで言うて、
我に返った。
A姉ちゃんは、
いつか、俺のお嫁さんになるねんから。
無意識のうちに、そう続けようとしててん。
姉と弟は結婚なんか出来ひんのに・・・
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みき(プロフ) - やすくんの君がため。また読みにきちゃいました(//∇//)色んなやすくんをfoolさんの作品で読ませて頂けて幸せです！ (2020年11月20日 21時) (
レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 焼き直し、ありがとうございます。新しい作品として読めました！切なくて、でも2人の愛をすごく感じました！ (2019年11月7日 16時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 焼き直しで初めて読んだので、私にはありがたかったです。切ないけどハッピーエンドで良かった！ (2019年10月30日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 焼き直し、お疲れ様です(*^^*) 新鮮な気持ちで読ませて頂いてます♪ (2019年10月28日 21時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ぷーかは年中無休。|´-`)(プロフ) - すばるくんの話、感動で泣いてしまいました…とてもいい作品でした… (2018年3月26日 23時) (レス) id: cb0b6d334f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2017年9月18日 6時
