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教えられた話はにわかには信じがたかった。
遊郭という場所は、
本の中の、自分とはかけ離れた世界でしかなかった。
その中に閉じ込められた遊女たちが、
どんな絶望の中で生きているのか。
私の母親は、そんな廓(くるわ)の中の女やった。
小夜子さんはああ言うてくれたけど、
父親は、ほんまのところは誰か分かれへんのかなって。
考えたら、恐ろしくなって、
身体がガタガタ震え出した。
「松子さんは、
亡くなった、錦戸家の先代の、
大切なご友人の一人娘さんやったんよ。
借金の肩代わりは出来ひんけど、
せめてA嬢様だけでも引き取りたいと、
先代がおっしゃって。
廓からこの家に連れて来はったんです」
小夜子さんが私を連れて向かったのは、
春先の庭の蔵。
「A嬢様。
ごめんなさいね。
旦那様には逆らえません・・・。
お嫁に行く日には出してあげるという事です」
外から南京錠のかかる音を、
どこか他人事のように聞いていた。
子供の頃から、
お父様は、
私には特別に厳しかった。
修兄様や亮兄様に対するのとは違う、
距離を置いた冷たいところがあったのは、
感じてた。
でもそれは、私がおなごやから、
躾をしてくれてるんやて、
思おうとしてきてん。
家族以外にも使用人がたくさんいる家で、
可愛いがられて育ったせいか、
孤独は感じたことがない。
いつでも、亮兄様が、
私を助けて、守って下さったから・・・
蔵の中は暗くて寒くて。
見つけ出した薄汚れて、
カビくさい古い反物をかぶって、
夜を明かした。
時間の感覚もない。
孤独と恐怖に押しつぶされそうやった。
小夜子さんが、時々やって来ては、
庭の裏手にある厠(かわや)にだけは連れて行ってくれる。
食事も差し入れてくれるけど、
食べる気には到底なられへん。
亮兄様に頂いたキャラメルを、
一粒だけ、口に含んだ。
甘い香りが私を包む。
亮兄様に会いたい。
一目でいい。
せめて、声だけでも・・・
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みき(プロフ) - やすくんの君がため。また読みにきちゃいました(//∇//)色んなやすくんをfoolさんの作品で読ませて頂けて幸せです！ (2020年11月20日 21時) (
レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 焼き直し、ありがとうございます。新しい作品として読めました！切なくて、でも2人の愛をすごく感じました！ (2019年11月7日 16時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 焼き直しで初めて読んだので、私にはありがたかったです。切ないけどハッピーエンドで良かった！ (2019年10月30日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 焼き直し、お疲れ様です(*^^*) 新鮮な気持ちで読ませて頂いてます♪ (2019年10月28日 21時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ぷーかは年中無休。|´-`)(プロフ) - すばるくんの話、感動で泣いてしまいました…とてもいい作品でした… (2018年3月26日 23時) (レス) id: cb0b6d334f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2017年9月18日 6時
