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A姉ちゃんは根拠のない自信を振りかざして。


「この話はこれで終わり。
缶詰、食べよう。
章ちゃん、お腹減ったやろ?」


いつもの優しい笑顔で言うねん。



その夜食べた、コンビーフの味は、

戦争が終わってから、
今までに食べた何よりも美味しかった。


それが悲しくて悲しくて・・・


A姉ちゃんが眠ってから、
一人で、庭に出て、
月を見上げて、ぽろぽろ泣いた。


俺がもっと大人で、強かったら。

A姉ちゃんをそんな仕事に就かせへんのに。


なんて無力やねん・・・









大工の仕事が終わった夜に、

俺も、

A姉ちゃんが働いてるキャバレーで、
ボーイ兼、歌手として働き始めた。


一人で行かせるんは、
姉ちゃんが、心配でたまらんかったんや。


好きなギターを弾いて、
好きな歌を歌うて、

大工の仕事よりも、
ずっと、ええお金もらえる事に、

最初はびっくりしたし、
嬉しかった。

それに、歌うんは、ほんまに楽しい。

だんだん、自分に力がみなぎってくる。



けど、
A姉ちゃんが、

いろんなおっさんに、
ベタベタされんの見るんが、
辛あて、苦しいて。

はよお金貯めて、
A姉ちゃんだけは辞めさせたいて、思うてる。






キャバレーの仕事を始めてひと月余り。


歌の仕事が終わって、
衣装の、丈の合わん背広から着替えてから、

いつもみたいに、
A姉ちゃんが出てくるんを裏口で待つ。


「章大が待ってるからて。
Aちゃん、
いつまで焦らすつもりや。
俺の妾になれば、
もっとええ家にも住まわしたるし、
章大の給料もあげたるから」


いやらしい男の声が聞こえてきて、
後先考えずに飛び出してた。


「A姉ちゃん、帰ろ」


無理矢理、割り込んで、

この店のオーナーの蒔田っておっちゃんから、
姉ちゃんを引き剥がす。


「このクソガキ、邪魔すんな!」


おっちゃんに殴りつけられたけど、
構わずに向かってって、

A姉ちゃんの、
折れそうな細い手首つかんで、

走って、逃げてきた。

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みき(プロフ) - やすくんの君がため。また読みにきちゃいました(//∇//)色んなやすくんをfoolさんの作品で読ませて頂けて幸せです! (2020年11月20日 21時) (レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 焼き直し、ありがとうございます。新しい作品として読めました!切なくて、でも2人の愛をすごく感じました! (2019年11月7日 16時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 焼き直しで初めて読んだので、私にはありがたかったです。切ないけどハッピーエンドで良かった! (2019年10月30日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 焼き直し、お疲れ様です(*^^*) 新鮮な気持ちで読ませて頂いてます♪ (2019年10月28日 21時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ぷーかは年中無休。|´-`)(プロフ) - すばるくんの話、感動で泣いてしまいました…とてもいい作品でした… (2018年3月26日 23時) (レス) id: cb0b6d334f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:fool x他1人 | 作成日時:2017年9月18日 6時

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