君がため。(無限大・黄)１ ページ27
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一昨年、明治４１年の年の暮れの大阪。
お母様と長兄の修兄様が、
相次いで、肺の病で帰らぬ人となってから、
この江戸から続く老舗の錦戸呉服屋の、
家の中は暗いもやに包まれたままやったけど・・・
昨年、明治４２年の４月。
お父様が、
次男の亮兄様を跡取りにすると決めはって。
東京で高校の先生をしてはった亮兄様を、
大阪のこの家に連れ戻された。
商売もうまく繁盛し始めてから、
最近はこの家にも、明るい光が差し込むようになった。
私は・・・
亮兄様とこの家で、
再び暮らせるようになっただけで、
毎日、飛び上がりたいほど、幸せな気持ち。
明けて、明治４３年３月。
今日は私の女学校の卒業式の日。
「はよせな遅れるで。
何べん見ても、おんなじ顔や」
私の二番目の兄で、
今となってはこの、
錦戸呉服屋の跡取りとなった亮兄様が、
袴姿と、髪の形を姿見で確かめてる私におっしゃる。
「亮兄様、帰ったら、
卒業のお祝いに、
約束のシネマに連れて行って下さいね」
「分かっとるから。
はよ行きなさい。
いつまでも子供やねんから」
亮兄様が、笑ってくれはった。
この笑顔が好き。
「もう子供やありません。
私も立派な乙女です」
私の言葉に、亮兄様が、少し困ったみたいに、
眉と目を下げて笑う。
その優しいまなざしに見つめられるのが、
子供の頃から、好きやった。
亮兄様と私は何一つ、似てるところがない。
亮兄様だけやなくて、
この家族の誰とも・・・
お父様と亮兄様のお二人は、
おうちの女中さんや、
縫製工場や店番の皆さん、
口を揃えて、そっくりやて言いはるし、
それに、亡くなった修兄様とお母様も、
ほんまによう似てはるのに。
「寄り道なんかせんと、
まっすぐ帰って来るんやで？」
「はい。行ってまいります」
亮兄様に見送られて、
編み上げのブーツを履いて、
学校へ急ぐ。
友達の加代ちゃんが角のお米屋さんの前で待っててくれた。
「Aちゃん、おはよう。
実は、私、お嫁に行く事になったのよ」
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みき(プロフ) - やすくんの君がため。また読みにきちゃいました(//∇//)色んなやすくんをfoolさんの作品で読ませて頂けて幸せです！ (2020年11月20日 21時) (
レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 焼き直し、ありがとうございます。新しい作品として読めました！切なくて、でも2人の愛をすごく感じました！ (2019年11月7日 16時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 焼き直しで初めて読んだので、私にはありがたかったです。切ないけどハッピーエンドで良かった！ (2019年10月30日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 焼き直し、お疲れ様です(*^^*) 新鮮な気持ちで読ませて頂いてます♪ (2019年10月28日 21時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ぷーかは年中無休。|´-`)(プロフ) - すばるくんの話、感動で泣いてしまいました…とてもいい作品でした… (2018年3月26日 23時) (レス) id: cb0b6d334f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2017年9月18日 6時
