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渇望して、焦がれて、
狂おしいぐらいに求められる、

あの切ないまなざしを、
ずっと求めてた。



今まで寝た男とは全く違ってた。

章大は他の誰よりも優くて、
苦しそうやった。


こんなに薄汚れた私を、
あんなに大切に扱ってくれるなんて・・・


A、愛してる、

章大の、心が、届いたから。


それだけで十分。






明け方に家を出た。

ここにはもうおられへん。


章大の夢を壊したくない。


私みたいな姉があっては、

あの子の夢はかなわん気がするねん。



行く当てもなくて、

土砂降りの雨の中、隣町まで来てた。


誰も穢れた自分を知らん場所に行きたかった。



通りかかった洋品屋さんの軒先で、
雨宿りさせてもらう。


綿のワンピース一枚では、
寒うて、寒うて、
がたがた震えが止まらへん。


よく見たら、村上洋品店とある。


ここは多分、お見合い相手て、

晴美ママが写真を見せてくれた、
あの人の家。


この人には、
私なんかじゃ、
もったいない。


きっともっと清楚で、真っ白なお嬢さんが、
現れるはず。


キャバレー勤めの、
何人もの男に囲われてたような、
とうのたった年増の女。


似合うはずもない。


この日本中探したかって、

私なんかと結婚してええはずの人なんか、
一人とおらん。


生きてることが申し訳なくて、

涙さえ流すのが、

悪いことのような気がしてる。


死んだら、章ちゃんに迷惑かける。


やから、どうやっても生き延びて。

ただ生きてるだけで。


遠くの町で。









気付いたら、その場に倒れてた。


目が覚めたら、
あの見合い写真の男の人が、
私を覗き込んでた。


「大丈夫ですか?
Aさん」


名前・・・


私の写真も、晴美ママが勝手に渡してあるん?


起き上がろうとしたら、
頭に激しい痛みが走った。

身体が重くて、
もう一度、横になるしかなかった。


「Aさん、昔、
うどん屋さんで働いてはりましたよね?
その頃の常連の村上です。
覚えてませんか?」


思い出した。

人のいい、明るい学生さん。


「戦争帰りで、大学に入り直したて言うてた、
あの村上さん?」


「そうです。
その村上です」


にかって笑った口元には、
真っ白な八重歯がのぞく。

昔のまんまの村上さんやった。


汚れる前の私を知ってる人・・・


ほっとしたら、
また眠くなった。

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みき(プロフ) - やすくんの君がため。また読みにきちゃいました(//∇//)色んなやすくんをfoolさんの作品で読ませて頂けて幸せです! (2020年11月20日 21時) (レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 焼き直し、ありがとうございます。新しい作品として読めました!切なくて、でも2人の愛をすごく感じました! (2019年11月7日 16時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 焼き直しで初めて読んだので、私にはありがたかったです。切ないけどハッピーエンドで良かった! (2019年10月30日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 焼き直し、お疲れ様です(*^^*) 新鮮な気持ちで読ませて頂いてます♪ (2019年10月28日 21時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ぷーかは年中無休。|´-`)(プロフ) - すばるくんの話、感動で泣いてしまいました…とてもいい作品でした… (2018年3月26日 23時) (レス) id: cb0b6d334f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:fool x他1人 | 作成日時:2017年9月18日 6時

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