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今、この一瞬は、狂った痴呆の女なんかやない。
「そら、もう２４の大人の男やで」
大人になってから、
余計に分かれへんなったことがある。
あの時。
無理矢理、蒔田に手篭めにされた後。
なんでA姉ちゃん、
蒔田さんの妾になんか進んでなったんや。
俺を置いてまで・・・
「章ちゃんの幸せだけが私の夢。
章ちゃんを守るためなら何にでもなれた。
ずっとこの日を夢見てた・・・」
不意に姉ちゃんが歌うように呟いた。
ひとりごとみたいに・・・
なんか、どっか、引っかかって。
聞き流されへんかった。
「A姉ちゃん、それどういう意味？」
「ん？
私、なんか言ってた？」
「今、言うたやろ。
俺の幸せんためなら何にでもなれたて。
どういう意味？」
「深い意味なんてないよ。
章ちゃんは歌手に向いてる。
素敵な歌を作る、
凄い才能があるし、
ギターも上手やし。
章ちゃんの歌は人を元気にしてくれる」
姉ちゃん、はぐらかしてるように見える。
戦争が始まった時、
俺、まだ８歳やった。
少しずつ苦しいなる生活の中、
ポン菓子、
なけなしのお金で、買うて来て、
俺にだけ、食べさせてくれたっけ。
『章ちゃん、美味しい？』
幸せそうに聞くねん。
『うん！めっちゃ美味しいよ。
姉ちゃんも食べる？
半分こしよ』
差し出しても、
自分は食べへん。
『章ちゃんは優しいなあ。
でも、姉ちゃん、お腹いっぱいなんよ。
学校で兵隊さんの軍服縫うとね、
おにぎりもらえるん。
章ちゃんは学校で、
畑仕事頑張ってんのに、
何も食べてへんでしょ？』
それが嘘やって、
いつ、気付いたんやったか、
今はもう覚えてないねん。
本土でも空襲が始まって、
お母さんも病気になってしもて、
不安でたまらんかって、
防空壕で泣いてる俺の手を握って、
『大丈夫。
姉ちゃんが、ずーっと、そばにいるからね。
章ちゃんが笑顔でおれるように。
章ちゃんは、たった一人の、
大切な大切な弟。
私の宝物』
歌うように綺麗な声で約束して、
なんべんも、指切りしてくれた。
いつもいつも、A姉ちゃんは、
俺だけのために生きてた。
「俺のせいなん？
俺のせいで、
まさか、蒔田のおっちゃんの・・・」
「ご飯、お代わりする？」
A姉ちゃんは、
俺が作った歌を鼻歌で歌いながら、
お米をよそおうとしてる。
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みき(プロフ) - やすくんの君がため。また読みにきちゃいました(//∇//)色んなやすくんをfoolさんの作品で読ませて頂けて幸せです！ (2020年11月20日 21時) (
レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 焼き直し、ありがとうございます。新しい作品として読めました！切なくて、でも2人の愛をすごく感じました！ (2019年11月7日 16時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 焼き直しで初めて読んだので、私にはありがたかったです。切ないけどハッピーエンドで良かった！ (2019年10月30日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 焼き直し、お疲れ様です(*^^*) 新鮮な気持ちで読ませて頂いてます♪ (2019年10月28日 21時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ぷーかは年中無休。|´-`)(プロフ) - すばるくんの話、感動で泣いてしまいました…とてもいい作品でした… (2018年3月26日 23時) (レス) id: cb0b6d334f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2017年9月18日 6時
