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「私、呉服問屋さんのご子息が、
こんなに素敵な方やと思わなかったんです。
亮さんときちんとお会いしたら、
やっぱりこのお話、お受けしたいなと思い直しました。ご無礼、お許し下さいね」
静子さんが、亮兄様のそばに駆け寄って来て、
私を押しのけるようにして、
隣に立ちはった。
「亮ももう今年は２７にもなるんやから。
そろそろ身を固めてもええ時期や。
のんびりして跡取りが出来へんまま、
修みたいな事にでもなったら、
錦戸の家は潰れてしまう。
静子さんのような、
華族のお嬢様が来てくれる事になって、
ほんまにありがたいことや」
お父様は、今すぐにでも祝言をって、
勝手に話を進めてはる。
誰も私の泣き出しそうな気持ちになんて、
気付いてくれるはずもない・・・
亮兄様と人力車に並んで座って、
映画館に出かける。
シネマはロマンティックで、
そのあとに連れて来て下さった流行りのカフェーも、
瀟洒で何もかもが洗練されていて。
いつもなら、胸がときめいて、
背中に羽が生えて飛んでいくような気持ちになるのに。
「ようそんな甘いもん、
好んで食べるなあ」
苦いコーヒーを口にしながら、
亮兄様が、
最近、流行りのシュークリームを頬張る私をからかうてはる。
「甘いのが美味しいんですもの。
亮兄様も召し上がったらええのに」
「俺はええ。
Aは甘いもんが好きやなあ。
もう少しあったかくなったら、
アイスクリンを買うてやるからな」
亮兄様、
今日は特別に優しい声色で話してくれてはる気がする。
ずっとこうしていられたらええのに。
亮兄様のこの笑顔を、
ひとりじめ出来たら・・・
シュークリームはいつもと同じように甘いのに、
目の前がかすんでる。
静子さんの笑顔が、
いつまでも胸に張り付いてるせい。
カフェーを出たら、
約束の百貨店に連れて来て下さった。
「A、なんか欲しいもんあるか？
髪留めでも買うたろか」
朱色のつげの髪留めは、ほんまに可愛らしいて、
心が弾むはずやのに・・・
「それかたまには洋装がええか？
何でも欲しいもん、言うてみなさい」
「今日はいいです」
断ったのに、
亮兄様が、最初に見たつげの髪留めを、
買うて、手渡して下さった。
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みき(プロフ) - やすくんの君がため。また読みにきちゃいました(//∇//)色んなやすくんをfoolさんの作品で読ませて頂けて幸せです！ (2020年11月20日 21時) (
レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 焼き直し、ありがとうございます。新しい作品として読めました！切なくて、でも2人の愛をすごく感じました！ (2019年11月7日 16時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 焼き直しで初めて読んだので、私にはありがたかったです。切ないけどハッピーエンドで良かった！ (2019年10月30日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 焼き直し、お疲れ様です(*^^*) 新鮮な気持ちで読ませて頂いてます♪ (2019年10月28日 21時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ぷーかは年中無休。|´-`)(プロフ) - すばるくんの話、感動で泣いてしまいました…とてもいい作品でした… (2018年3月26日 23時) (レス) id: cb0b6d334f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2017年9月18日 6時
