君と2人で歩く日々を II【仮面ライダー】【スーパー戦隊】【短編集】

2人は不器用【555：乾巧】➷ ページ5

➷バレンタイン企画・麗華様リクエスト作品


Aは西洋洗濯舗菊池の外をうろうろしながら、レジに立つ乾巧の様子を時々ちらりと見ていた。

ことの発端は1週間前。共に生活している木場勇治たちに巧への想いを打ち明けたところ、「応援するよ」「じゃあバレンタインデーにチョコを渡しちゃいましょう」「そうだな、どーんと告白してこい！」と押しに押され。
そして今日、作ったチョコを洗濯物と一緒に持って彼に会いに来たのだが、1つ想定していなかったことがあった。
それがこの、菊池の店内に詰めかけた女の子たちである。皆、巧にチョコを渡しに来たらしい。

そりゃそうか、乾さんがモテない訳ないもんね、とAは溜息を付く。いつだったか、「時々巧のファンのお客さんが押しかけてきて大変なの」と園田真理がぼやいていたことも思い出した。
巧は少し煩わしそうにしながらも全部受け取ってあげている。仕事もしつつ彼女らの対応もしていて、大変そうだ。

……帰った方がいいかな。

ふとそう思う。巧に迷惑はかけたくないし、あんなに貰っていたら自分からのチョコなんて要らないかもしれない。
しかし引き返そうとした途端、彼と目が合ってしまった。
Aがひとりで慌てている間に、巧は女の子たちの間をすり抜け、店から飛び出してきた。

「A」
「乾さん……」
「悪いな、入りづらくて。洗濯物だろ？」
巧がこちらに手を伸ばす。

「あ、いや、それもあるんですけど……」
「ん？」

Aはギュッと目を閉じ、洗濯物とチョコの箱をまとめて押し付けた。

「乾さんに、チョコ渡しに来たんです。良かったら食べてください。それじゃ……！」
「あっ、おい……！」

Aは巧の声を無視して走り去った。

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