#42 ページ42
杏寿郎side
あれはまだ、俺が柱になるよりずっと前の出来事だった
夜な夜な忽然と人が神隠しに遭うという物騒な噂が立つ町があると報告を受けた鬼殺隊本部から、鬼の仕業ではないかと調査依頼が来た
任務を受け出向いた先の町では、その町で一番大きな神社で丁度 婚礼が行われていた
その花嫁は陽の光で輝く美しい白無垢を身に纏い、綿帽子から覗き見えた 柔らかく微笑む真っ赤な紅と
ほんのりと色付いた頬がとても印象的だった
その隣には、花嫁を心底愛おしそうに見つめ 手を差し伸べる新郎の姿もあり
その様子は見ているこちらも幸せな気持ちが溢れる程だった
正にしあわせの象徴
そんな言葉が良く似合う空間が拡がっていた
見ず知らずの相手ではあっても、二人の永遠の幸せを祈らずにはいられなかった
…だが、その二人が夫婦として人生を共にした時間は…そんな願いとは裏腹に
無情にも打ち砕かれて、そう長くは続かなかった……
_「キャァァァアア!」
_杏寿郎「…!」バッ
その次の晩、見回りの最中に聞こえた悲鳴
全速力で向かった先では、既に人喰い鬼が一般人に手を掛けてしまっていた
その被害者は、昨日見た…あの 花嫁を愛おしそうに見詰めていた男性だった…
何とか鬼の首は切り落とす事が出来たが、俺の到着が遅かったせいで隠しの処置も間に合わず
その男性は泣き叫ぶあの花嫁の腕の中で静かに息を引き取った
自分の無力さに、言葉も出なかった……
後日、どうしてもあの花嫁の様子が気になって
俺は あの晩伝えられなかった謝罪の言葉を言いに、その人の元へと足を向けた
その手の中で最愛の人の温もりが消えていく恐怖…絶望感は計り知れないだろう
きっと、数日経った現在も…その感情があの女性を包み込んでいるに違いない
そう思っていた……だが…
_杏寿郎「あの時、私がもう少しでも早く助けていれば…」
_「いいえ、顔を上げて下さい。貴方のせいではありません
確かに、彼が今も隣で笑ってくれていたら…と…願わない時はありません…っ
けれど…彼は私に、最高に幸せな時間 という心の拠り所を遺していって下さいました…
彼の隣で花嫁としての時間を過ごせた事実は、私がこの世で生き…この記憶がある限り消えはしません
もうその肌に触れられなくとも…あの愛おしい声を聞く事が出来なくとも…
私の中の幸せな時間が…記憶がある限り、私は前を向いて歩いていけるのです
私を花嫁にしてくれた、世界でたった一人の素敵な方ですから」
62人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レモネード - 机に向かって書く物といえば、もうあれしかないよね。いよいよ結婚式かぁ〜。みんなと会うのも久しぶりなんだろうなぁ。カナヲや梅ちゃん、アオイちゃんも来てくれるよね。さらに可愛くなっていてほしいなぁ。 (2022年1月6日 15時) (レス) @page50 id: 029fc8293f (このIDを非表示/違反報告)
P(プロフ) - レモネードさん» 天元さんとお父様の擦れ違いの様な物が、少しずつ糸を解くように解れて行って…お互いに歩み寄り始めて良かったですね(^^)次章はいよいよ結婚式…宇髄夫婦のみならず、他のメンバー達も大集合の回になります! (2022年1月5日 23時) (レス) id: 97219a3715 (このIDを非表示/違反報告)
レモネード - お父様はあんまり感情を表に出すのが苦手だったんだね。でも、二人の写真を見て喜んでくれてよかった〜。 (2022年1月5日 1時) (レス) @page49 id: 029fc8293f (このIDを非表示/違反報告)
P(プロフ) - レモネードさん» 天元さんから見たお父様像は明らかにされていましたが、お父様は 天元さんの事を ずっとどう思っていたのでしょうか…?この結婚式を機に、また二人の関係が前進するといいですね!こちらこそ、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします(^^) (2022年1月3日 21時) (レス) id: 97219a3715 (このIDを非表示/違反報告)
レモネード - 天元さんのご両親、特にお父様とは子供の頃は嫌悪感を抱いていたけど、今はどう思っているんだろう……。もう少し話し合いが必要だね。年が明けたね。今年もよろしくね。 (2022年1月3日 0時) (レス) @page46 id: 029fc8293f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:P | 作成日時:2021年12月5日 23時