君日記（ Ⅰ ） (ページ50)

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廉「夏のせいじゃないねん、」

突然低い声で言う廉くん

「どうしたの、？」

廉「夏が恋をさせたわけじゃないねん、」

廉くん、

私は廉くんの手をぎゅっと握る

廉「ちょっと目、」

そう言いながら

私の目を覆う廉くんの手

何も見えないせいで

もっと緊張しちゃう

そして私の腕には

何かずっしりしたものがついている

廉「できた」

腕を見ると、

私が行った時計屋さんで

目に止まった腕時計

その腕時計には

色も形も違う貝殻が4つ

描かれている

そして

カチカチと進む音は

今まで聞いたことがないくらい澄んでいた

「ねえ、ありがとう、

　本当に嬉しい、」

その時計をもらったことが嬉しくて

感動しちゃって

涙が溢れる

でもそれだけが理由じゃなくて

この腕時計が

私がいられる時間の終わりも

示してしまう、

そう思ったからだ

廉「どんな時間も、

　俺とおってくれないかな

　とか思って、」

そのまま私を抱きしめてくれる

そして、私の涙を

廉くんの綺麗な手が

ゆっくりすくう

「次、私の、いい？」

紙袋を差し出すと

私の目をしっかりみて

廉「ありがとう」

そう笑って見せてくれた

廉「まってー？

　めっちゃすき、」

だから、すきって

すぐに言わないで、

廉「これ、つけてや」

「わかった、」

廉くんの背後に回って

ネックレスを手に取り、

後ろからつけてあげる

「できた、

　みせてー？」

その言葉はもう遅くて

ネックレスを握っていた手は

そのまま廉くんに引っ張られて

後ろから抱きつく形になった

「ちょ、」

どうしたの

なんて聞く暇なんかなくて

もうすでに

唇は重なっていた

廉「もうどこにも行ったらあかん、

　ずっとそばにおってほしい、」

その言葉が

"廉くんだけを考える日"

を

締めくくった

夏の夜空の下で、

重なり合うふたつの影は

離れたくない

その気持ちを

海に訴えかけているみたいだ