君だけの花 (ページ5)

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前編-5 ページ5

テヒ「○○ちゃん、
優しいね。
僕、嬉しい。大好き。」

・・・キュン、
とした。

こんな風に
誰かに抱き締めてもらうの、
何年ぶりだろう。

あ、そっか。２度目だった。
さっき抱き締めてくれて
泣かせてくれたんだった。

背が高いから、
花びらが私の頭の先に触れる。

───いい匂い。

ひまわりの匂いなんだね。

○○「・・・テヒ、
私、今日、仕事なんだ。
家からいなくなるけど、
大丈夫？」

テヒ「うん。大丈夫。」

○○「一人で
外に出たらダメだよ。
すぐ帰ってくるから。
お水置いておくからね。」

お水さえあれば、
しおれたりしないよね？
大丈夫だよね？

不安を抱えながら、朝食を食べて
バタバタと家を出た。

────落ち着かない。

一人で大丈夫かな。
お水、３本で足りるのかな。
お日様にあたりすぎてないかな。
お日様にあたった方がいいの？

データ入力をちょっと中断して、
ネットで
ひまわり切り花長持ち
って検索する。

・・・人間になったひまわりに
採用できるものがない。

・・・直射日光ダメなんだ！
どうしよう、テヒ。

△△「何サボってんの？」

○○「わっ、びっくりした。」

・・・すっかり忘れてました。

失恋したこと。
この人のこと。

そうそう、この距離感のせいだ。
近いのよ、すごく。
だから私も勘違いしてさ。
恥ずかしい。

今朝も泣いたのに、すっかり
どうでもよくなっている。

・・・こんなもんか。
私の『好き』なんて。

○○「ブーケ長持ちさせたくて。」

△△「ああ！あれ、
花屋さんが
すごくこだわってくれて。
彼女嬉しそうだったな。」

○○「お幸せそうで何より。」

△△「あはは！
ま、新婚だからねえー！」

それどころじゃないから、
あっち行って、なんて。

こんな風に思えるのは、
テヒのおかげだ。

今の会話だって本当なら
ズキズキして
耐えられないはずなのに。
良かったねなんて平気で笑えてる。

○○「あ、忙しいから、
ごめん。」

△△「あ、ごめんね。」

去っていく彼を見送ることもなく、
パソコン画面にへばりついて、
手当たり次第メモした。

何にも参考にならない。

とにかく、日光にあてないこと。
風通しをよくすること。
・・・トイレはどうなるの？
お漏らししてたらどうしよう。