７．大事なお話。〜貴女〜 ページ7
「ん…」
「ん？」
まーくんの腕の中で、そうっと肩を押し返す。
「まーくんに『今日は会えない』って言うの、本当は凄く嫌だった。」
「そっか。」
ホッとした彼の目が細くなった。
私の言いたいことのある時、まーくんにはいつも見抜かれてしまう。
後悔しても遅いけれど。
今日だって、私が風邪をひかなければ…。
「風邪ひくのは、誰だって嫌だよね。」
ぽんぽんと頭を撫でられて、優しく言われる。
「Aが言ってくれなかったら、オレは待ち合わせの場所に行くとこだった。」
「うん…」
「だから、ちゃんと言ってくれてありがとう。」
自己嫌悪が和らぐ。
風邪のせいで、心細かったからだと思う。
温かい言葉に泣きそうになってしまい、遠慮がちにおでこを彼の肩につけた。
「そのおかげで、初めてAの家にも来れたし。」
「初めてだね。」
「そうだよ。いつかは行かなきゃと思っていたから。」
「えっ。」
顔を上げる。
まーくん…？
それって…
「今度、オレの家にも来て？中華料理屋さんの方ね。」
「ね？」って、私のおでこにまーくんのおでこをコツンとされる。
「いいの…？」
「うん。美味しい餃子あるから。食べにおいで☆」
あっ、そういうこと？
「ありがとう。お店には、まーくんのお父さんとお母さんも…」
「いるよ。オレの彼女ですって紹介する。」
え？
びっくりして、もう咳が止まってる。
「まーくん…」
「なかなか言えなくて、ごめん。Aが良ければ、家族に紹介させてください。」
彼は私を見つめたまま、改まって言った。
私も、彼の丸い瞳を見つめ返す。
ご両親に紹介…
驚きと嬉しさで、返事が上手く出てこない。
「大丈夫だよ。よろしくお願いします。」
やっと声を出せて、まーくんに伝えられる。
まーくんと私の恋愛は、これまで家族にもずっと秘密にしていた。
それでも不安が少なかったのは、まーくんが私に優しさを注いでくれたから。
忙しい時でも、お互いがお互いを気にかけていると実感出来たから。
もう一度抱き寄せられて、ぎゅっとされる。
まーくんがこういう風に抱きついて来る時は、離れて欲しくない時だって知っている。
ありがとう。
彼の背中にそっと手を回して、抱きついた。
・
どのくらいそうしていただろう。
まーくんの温かさに、身を委ねていた時。
「A…お薬飲んだっけ？」
「あ…飲んでない。」
ご両親に紹介するって言われて、ドキドキしてすっかり忘れてた！
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西 - この方角に福があるはずです
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作者名：おちょう | 作成日時：2017年10月10日 22時
