６．頑張り屋さん〜雅紀〜 ページ30
「Aは？」
「私もちょっと、仕事のことで…。あとから話すね。」
「うん。」
仕事のこと？
何だろう。
とりあえずそのままオレは台本を持って来て、ソファーに腰掛けた。
えーと、前に覚えた所はここまでだから…
パラパラとページをめくり、今日覚えたい所を見つける。
ちょっと前から読んで、今日はここから。
ちょうどそのタイミングで、Aが隣に座る。
ソファーの前のローテーブルに、何か資料が置かれていた。
「これ何？」
見てもいいのかな？
見たらダメなものを置かないだろうから、たぶん大丈夫。
「今度ね。夏休みの終わりに、放送局で作るスペシャル番組を放送する日があるんだ。
長時間の放送の中で、私のコーナーを持たせてもらえることになった。」
え？！
「スペシャル番組！凄いじゃん。」
「あっ。全部じゃなくて、番組の中のいちコーナーだよ。」
「Aの司会するコーナーがあるってことでしょ？凄いよ。」
Aはラジオパーソナリティーの仕事をしていて、普段は平日のお昼に番組を持っている。
オレは、仕事に行く時や休憩の時に聞きたくて聞いてる。
「ありがとう///
まーくんには、最初に言いたくて。」
少し照れてはにかむA。
嬉しそうにしていて、何故かオレまで照れてしまう。
「選ばれて良かったね。」
「うん///」
彼女がいつも頑張ってることを、オレは知ってる。
だから「一緒に頑張りたいな」って、素直に思えるんだよね。
・
その後は、一緒に頑張りたいと思いながら台本を読み進めて、意外と捗った。
Aも資料と向き合っていて、途中で二人分のお茶を淹れてくれた。
ふと顔を上げたら、Aがシーツを干し終わるところだった。
「ごめん、気づかなかった。」
「いいよ。もうすぐ終わるから。」
ふわりと笑う彼女に安らぐ。
やっぱりずっとそばにいたいし、いて欲しいな。
二人っきりの時間はあっという間に過ぎて。
この日の夜も、いつものように彼女を自宅まで送り届けた。
□
翌日。
オレは、蕪木マネージャーの運転する車で仕事に向かっていた。
「ねぇ、蕪木さん。」
「何かしら。」
「佐倉さんと金沢に行くんだけど、スケジュールの空いてる日はある？」
「金沢？」
唐突に訊ねたので、驚いているのが分かる。
いきなりすぎたかな。
「今は運転中だから、後から確認するわ。
時期はいつくらい？」
「夏から秋にかけて、かな。」
７．理解ある蕪木さん〜雅紀〜→←５．同じ部屋で別のことをしてる〜雅紀〜
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作者名：おちょう | 作成日時：2017年10月10日 22時
