２．おばあちゃんの話。〜貴女〜 ページ26
「まーくん。」
「ん？」
「お風呂入る前にね、ちょっと話したいことがあって。」
「あっ、そうだったよね。なになに？」
まーくんの家に来る前に、「話したいことがある」とは予め言ってあった。
「私の母方のおばあちゃんが、石川県に住んでることは知っているよね？」
「うん。Aん家で聞いたよ。」
「そのおばあちゃんと…会ってもらえないかな？」
一瞬の間の後、まーくんはびっくりして私の方を見た。
「おばあちゃんね。時々足が痛いって言ってて、もう長距離の移動は出来ないんだ。
会うとしたら、私達が石川県に行くことになるんだけど…。私にとっては、大事なおばあちゃんだから。まーくんのことを、きちんと紹介したくて。」
思いがこもってしまい、一気に喋ってしまう。
もちろん、二人で石川県に行くなんて前例のないことも、無茶なお願いだとも分かっている。
それでも、一度伝えずにはいられなかった。
「そっか。」
まーくんの手がぽんっと頭に乗っかった。
「分かったよ。蕪木さんにスケジュール聞いてみるね。」
「え…いいの？」
「いいよ。Aのおばあちゃんだもん。」
今度は、私がまーくんの方を見る。
もしかして、覚えててくれたのかな。
私の祖父母はもう3人が亡くなっていて、今いるおばあちゃんは最後の1人だということ。
「オレ、もうおじいちゃんとおばあちゃんは皆会えないから。Aのおばあちゃんに会いたい。」
優しい目をした彼の言葉に、私は頷いた。
嬉しくて、ちょっとだけ涙腺が緩む。
「ありがとう。」
「言ってくれてありがと。」
泣きそうになっているのを見せないように俯いたら、頭に乗っていた掌がゆっくりと私を抱き寄せた。
ダメって言われると思っていたから、素直に嬉しい。
「オレたち、家族みたいなものだよ？」
耳元でぽそっと呟かれた言葉に、堪えきれず涙が溢れた。
プロポーズはまだされていなくても、まーくんはこうして私を気遣ってくれる。
そのことは私の心を温かくしてくれるんだ。
彼に優しく背中を撫でられて、少し落ち着く。
「A…」
「ん…？」
「お風呂上がりの匂いする。」
「うん。」
「好き。」
さっきみたいに耳元で囁かれて、甘い言葉が一気に鼓膜を震わせる。
ちょうど、明日はお休みの日だ。
「明日休み？」
「そうだよ。」
「良かった。一緒に寝よ。」
「いいよ。」
お休みを確認してから、必ずこう言うまーくんが好き。
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作者名：おちょう | 作成日時：2017年10月10日 22時
