１．会いたいのに、会えない。〜貴女〜 ページ1
「けほっ、ごほっ」
もう何度目か数えきれない咳が出て、マスクした口元を軽く押さえる。
朝イチで病院に行っておいて良かった。
久しぶりにそのレベルの風邪をひいてしまった。
今日は金曜日。
「お互いのオフの日を合わせて会おうね！」
と、まーくんと約束していた。
まーくん。
相葉雅紀くん。
私のお付き合いしている人は、アイドルの嵐の相葉ちゃん。
付き合い始めて2年が経ち、色々乗り越えてようやく実感が湧いているところです。
それなのに、今日は…。
ちゃんと電話で謝った方がいいよね。
せっかく、ケーキ屋さんの方もお休みにしてもらえたのに。
私のメインのお仕事はラジオDJをしていて、月曜日から木曜日の午後に番組を放送している。
そして、週末の金曜日と繁忙期は、ケーキ屋さんの「パティスリー ルミエール」でアルバイトしていた。
学生の時はラジオ局のアルバイトとケーキ屋さんのアルバイトだったんだけど、徐々にラジオのお仕事が増えてきて…
私を応援してくれているケーキ屋さんの優しさで、今は金曜日だけ入らせてもらっている。
まーくんのオフに合わせて、それをお休みにしてもらったのに…！
って、うじうじしても仕方がない。
彼に風邪をうつすわけにはいかないから、ちゃんと話そう。
「今日は会えない」ことを。
□
・
トゥルルルル
トゥルルルル
・
電話の発信音だけで、私の胸は変にドキドキしていた。
「はい。相葉です。」
まーくんが電話に出てくれる。
「佐倉です。まーくん、今、電話大丈夫？」
トクトクトクと鳴る心臓に、熱が上がるのを感じた。
「A？どしたの？大丈夫だよ。」
「ありがとう…けほっ！」
マスクをずらして喋り出すと、いきなり咳が出て来た。
こんな大事なタイミングで！
「ん？」
「あの…ごめん、私、昨日の夜から風邪ひいちゃって。今日は会えないんだ…げほっ」
「えっ！」
電話の向こうで、彼の驚いているのが分かる。
「そうなの？昨日から？大丈夫？」
「うん。今朝、病院行ってきたから。」
「そっか〜。全然気付かなくて、ごめんね。」
「な…謝らなくていいよ…」
ゴホゴホと一気に咳込んだ。
ほんと、こんな事になっちゃうなんて。
謝るのは、私の方だよ。
「熱はあるの？」
「少しある。」
「A。もしかして今、家に一人？」
「へ？うん。」
病院に行く時は母に送ってもらったけれど、その母も今は仕事に行っていた。
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西 - この方角に福があるはずです
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作者名：おちょう | 作成日時：2017年10月10日 22時
