神様がくれた最高の薬 (ページ2)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:2,250 hit

Chapter 2 ページ2

歌苗が外出した後、残ったメンバーは夕食を食べていた。いつもの夕食より品数は多く豪華だが、事実上ワーグナーへの差し入れのおこぼれだ。
「美味しいわね、子猫ちゃんのご飯」
「気に食わん」
「ルー君ってばそれ、ヤキモチ？」
モツはニヤニヤしているが、ベトは不愉快そうに一瞥した。
「そうではない。こちらに歩み寄る意思が全くないやつに対して、下手(したて)に出る必要はないと言っているのだ」
「先輩の言う通りです。我々は彼の太鼓持ちではないのですから」
ワーグナーを良く思っていない者は、次々と不快感を露にする。
「ちょっと体調悪ぃぐらいで、こったら事する必要ねぇだ！」
「そうだよ。私達を追い出しといて、都合良すぎ」
「まぁまぁ、みんなそんなに邪険にしないで」
「む、Aは小僧の味方なのか？」
ワーグナーの肩を持つような発言をしたAに対して、ベトは不服そうだ。
「敵味方とかそういうのじゃないけど…歌苗ちゃんが嬉しそうだから」
ワーグナーが音羽館に現れてから、"姉さん"と言われ本当の弟のように可愛がっていた。長らく1人で生きてきた歌苗にとって、例え血の繋がらないクラシカロイドだったとしても、弟が出来た事に少なからず喜んでいたのは音羽館のメンバーはみんな知っている。
「家族の心配をするのは、当たり前だと思うよ」
Aの一言に、これ以上の不満を言う者はいなかった。

しばらくすると、世紀末みたいな顔をした歌苗が帰って来た。手には音羽館を出発した時に持っていた、惣菜が入ったタッパーをそのまま持っている。
「歌苗、お帰りー。早かったね」
「子猫ちゃん、坊やには会えたの？」
「会えたのは会えたんだけど…」
歌苗は肩を落とし、相当凹んでいる。三弦に部屋まで通されたが、"姉でも何でもないって言っただろ！"と言われて、そのまま追い返されたのだという。
「ワー君、具合悪そうだった…」
歌苗曰く、度々咳き込んでいたとのこと。多少、熱もあったのだろうか…フラついていたらしい。今のワーグナーには、無理を押してでもやらなければならない事がきっと沢山あるのだろうか。
見かねたAは助け船を出す。
「歌苗ちゃん、それ貸して？私が行ってみる」
「えっ？」
「私、看護師だから。ちょっと強気に出れるかも」
「Aさん…」
自分ではこれ以上の進展は見込めないと判断した歌苗は、"お願いします"と持って帰った袋をAに渡した。