鬼になった少女？の話 (ページ3)

今日:9 hit、昨日:44 hit、合計:4,654 hit

食べたいページ3

どうにかしてこいつを食べたいと思った。
とにかく夢中だった。
包丁なら切れるかもと思って、そいつを咥えたまま取りにいった。
包丁を取ったときには、口の中にすっぽり収まっていた。
そんなわけで、あの肉塊を丸呑みした。
そういえば、お父さんの姿が見えないけどどうしたんだろう。
まだ夜だから、外は危険だけど気になった。

少しでも身を守れればと思って、包丁を持ったまま、戸に向かって、絶句した。
壊れた戸の向こうには、お父さんの着物と、少しの骨と皮があった。

家族はみんないなくなっちゃったんだ。

マムシが、向こうに見えた気がした。
肉塊は呼び水になったみたいだった。
いつもなら、毒を持ってるやつがいるし、危険だからこんな暗いときに追いかけたりはしない。
でも、気づいた時にはマムシを捕まえて、食べてた。
食べたことのない味がした。

気が付いたときには、わたしは、毒持ちも、大きいやつも小さいやつも関係なく、蟲やケモノを食べ続けていた。私が住んでいた家が建っていた山の、奥の奥にある、小さな洞窟で。

とりあえず、周りにあった蟲やらケモノやらを全部口に入れてから、状況を整理しようと思った。
そもそも自分の姿がおかしい。黒かったはずの髪は薄い紫色になっていた。
もしかしたら鬼になっちゃったのかもしれない。
毒だから食べるなと言われた草たちが目に映った。
おいしそうとは全く思わなかった。でも、どんな味がするのか知りたい。

何より死んでもいいからおなかいっぱいに食べたい。

適当につかんで、口に入れて、噛んで、飲んだ。
おいしくはなかった。なんなら戻しそうだった。
でも、それじゃあおなかいっぱいに食べるなんてできない。
つかんで、口に入れて、噛んで、飲んで、その繰り返し。
ひたすら、ひたすら。

おなかは、なんとかいっぱいになった。