食べるもの ページ18
気が付くと、私の体は、いつも心を食べるときのように透けていた。
別に死んではいないようだ。
左足を除いて、四肢の付いていたところはじくじく痛むし、藤の花を食べたせいか吐き気がするし体が解けていくような感触がある。
相変わらず、まともに色は見えない。
明るいか暗いかとかは分かるし、ものの形は何となくわかるが、すべて桃色に見える。
ところで、どうして私は、両親と住んでいた家の中にいるのだろうか。
まあ、考えたところで今はまだ分かるわけもないか。
不意に、世界が回った。
……どうやら首ごと頭が胴から取れてしまったようだ。
それにしても、おなかすいた。
真下には胴がある。食べたい。
食べたら死んでしまうかもしれない。でもいい。食べたい。
口を開けて、左肩に噛みついて、千切る。
すぐに溶けた。藤の花のせいだろう。
同じように右肩を食べようとして、不可思議なことが起こっていることに気が付いた。
新たに、左肩ごと腕が生えてきている。
右肩を噛み千り、まだ口の中に肉が残っているが、心臓のある所も食べる。
心臓はなくなったはずなのに、むしろさっきよりもずっと大きく鳴り響いている気がする。
右腕らしきものが生えたところで、今、自分が全く違う何かになっていく……いや、戻っていくところだということがわかった。
そのまま、残りの肉も全て食べ切った。
四肢も胴ももう戻ったようだ。
身体中が燃えるように熱い。
ああ、そうだ。思い出した。
私は……
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作者名:ユウピイ | 作成日時:2023年10月29日 18時