審神者就任日前夜 ページ15
「あら義勇、どうしたの?荷物なんてまとめて。私、キャンプの予定忘れてたかしら?」
蔦子姉さん、今生でも唯一の家族である彼女が慌てた様子でリビングに貼っている月間予定表を見に走り出そうとする。
「…その、住み込みの仕事に…」
どう説明すればいいんだ??
未来で歴史を守るために戦います??
そんな答えで家を出ることを認めてもらえるわけがないだろう。
こちらが慌てていると、蔦子姉さんは悲痛な表情で悲しげに言った。
「ごめんなさい。義勇はいつも私のことを優先してくれるけど、いきなり知らない人と一緒に住むのは嫌よね…」
「いや、そういうことではなく…」
しまった。時期が悪かったかもしれない。
蔦子姉さんは成人を迎え、ずっと交際を続けてきた男性と結婚することになった。親がいないこと、そして弟の俺と暮らすことにも了承してくれた善良な人だ。
その後が波乱万丈過ぎてよく覚えていないが、前世で姉の旦那になるはずだった人と同じ顔をしている気がする。姉の見る目の良さには感嘆だ。
でも普通はきょうだいの伴侶との暮らしなど肩身が狭くて仕方ないだろう。正直前世でも周りにいたきょうだいはすごく仲がよかったのできょうだいの伴侶と暮らすことに特に違和は覚えない。
「クラスメイトに一人暮らしをしているやつがいて、そいつがやっている仕事を紹介してもらったら寮があるみたいで…学校にも近いし」
しどろもどろになりながら言葉を連ねる。優しい姉に嘘をつくのは心が痛い。
話すのが苦手な俺になれている姉は、じっと待ってくれているがやはりその目からは悲しげな色が消えない。
「…やりたいことがあるんだ。」
「そうなの?家にいたらできない?」
「そこでしか、できない、…と思う」
業務内容も把握しきれていないのであやふやな答えになるが、最後には仕方なさそうに微笑んで折れてくれた。
「いつでも帰ってきていいんだからね?義勇の家は此処なんだから。」
「うん」
ホワリと胸が暖かくなる。遠い昔に失われたそれが再び手に入るとは思わなかった。記憶が戻った時は涙が堪えられなくて慌てさせてしまったけど、今でも蔦子姉さんのいるこの場所はなんだかとても眩しいものに見える。
「…それで明日から行ってこようと思うんだけど」
「明日!?家を出るつもりならもっと早く言いなさい!」
最後に怒られてしまったのはまあ、俺が悪いな。
でも俺もいきなり言われたのだから許して欲しい。
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ふわな - あの某掲示板感が面白いです!更新待ってます! (2022年8月12日 15時) (レス) @page8 id: 71a4ce2144 (このIDを非表示/違反報告)
花 - 続きを寒いなか正座で待機中 『フクフクフク……………どこ?』 (2021年2月6日 22時) (レス) id: b89caa16cb (このIDを非表示/違反報告)
めがね - つ・・・続きを・・・O( ° O ° O) (2021年1月23日 22時) (レス) id: af4084f8cb (このIDを非表示/違反報告)
ハイキュー大好き!!(プロフ) - 続きがとても気になります!!更新頑張ってください!! (2020年10月11日 23時) (レス) id: 2d39102061 (このIDを非表示/違反報告)
燐華(プロフ) - 更新ありがとうございます!これからも頑張ってください! (2020年7月12日 14時) (レス) id: 0be41e7afe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トイプードル | 作成日時:2019年9月24日 11時