25.あふれた気持ち ページ27
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「…っ、」
はっと目が覚めて体を起こす。
…夢を見ていた。お母さんと妹と会えた夢。
涙の
あんなに揺らいでいた心は
外はまだまだ暗い。
私の体には布団が掛かっていて、不死川さんのことを思い出して部屋を見回す。
「…不死川さん…?」
静かな寝息が聞こえてきて、すぐ横に視線を移すと───布団の横、畳の上で寝るあなたがいた。
無防備な寝顔を私の方に向けて。
私に掛かっていた布団を、今度は不死川さんに掛けて、そのままあなたの隣に寝そべった。
起こさないようにそっと頬に触れる。
深い傷の跡。長いまつ毛。綺麗な色素の薄い髪。
普段の鋭い目付きからは想像できない、優しい寝顔。
胸がきゅっと締め付けられた。
『───A、』
今思えば、あなたは私の本当の名前ばかり、何度も何度も呼んでくれた。
優しい声で名前を呼ばれるのが、くすぐったくて、心地よかった。
『…また来る』
帰り際に、傷だらけのゴツゴツした手で頭を撫でてくれるのが嬉しかった。
いつも魔法使いみたいに現れて、私のことを助けてくれた。
私の心が救われる言葉をかけてくれた。
あなたの紡ぐ言葉はどれも温かくて、優しい目を向けてくれた。
『もう大丈夫だァ』
誰かを守るために、鬼と戦う後ろ姿。
初めて会った時から、あなたは私の世界を変えてくれる予感がした。
私は気付いていなかった。
本当は最初から、どうしようもないほどに惹かれていたんだ。
会いたい人がいるから明日が楽しみだなんて、そう思えたのは初めてだった。
「……A…、」
目を瞑ったままのあなたが、掠れた声で私の名前を呟く。
その瞬間に、抑えきれない気持ちが溢れた。
私は──────あなたのことが、好きなんだ
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玲羅(プロフ) - すごく面白いです!体調に気をつけて、更新頑張ってください! (4月19日 11時) (レス) id: cb3a3c8e5d (このIDを非表示/違反報告)
萌娜(プロフ) - かるぱすさん» コメントありがとうございます^^そう言っていただけると本当に嬉しいです…!もう少しで完結予定なので、最後までよろしくお願いします♡ (4月3日 11時) (レス) id: 8beddeaf96 (このIDを非表示/違反報告)
かるぱす - 初コメ失礼します!この作品すごく面白いです!更新待ってます! (3月31日 0時) (レス) @page22 id: 11d8e78453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:萌娜 | 作成日時:2024年2月29日 17時