24.福寿草 ページ26
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それからしばらくの間、ただひたすら不死川さんの腕の中で泣いていた。
泣き腫らして、苦しかった呼吸が少し楽になって、気の抜けた私はそのまま意識を手放した。
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「───A、」
…お母さん?
ふわふわと浮いているような感覚で、ゆったりと流れる空気が優しくて温かい。
よく晴れた綺麗な青空。そこらじゅうに咲いている黄色い花。
…この花、妹が好きだったな。家の周りに咲いていた。
妹は花の名前がつけられていた。
…
「お姉ちゃん…っ!」
「…菊ちゃん…」
大きくなって、私より少し目線が上になった妹は、私に抱きついてきてくれた。
…久しぶりに、名前を呼んだ。
そうだ、菊ちゃんって呼んでたね。
小さい時、妹は自分のことを菊ちゃん菊ちゃんって言ってたから。
幼さが抜けて、顔も声も、大人っぽくなっていた。
私がいつか見ることができたらと思っていた姿。
「A、ごめんね」
お母さんがそばに来てくれて、頬を撫でた。
お母さんの手は温かくて、顔色もよくて、ほっとする。
「今まで辛い思いをさせて、本当にごめんね」
謝らないで。ふたりが苦しむ姿を見ている方が、ずっとずっと辛かったから。
今思えば本当に短い時間だったけど、家族で過ごした時間は言葉では言い表せないくらい幸せだったの。
「お姉ちゃんといれた時間が幸せだったよ」
「…本当に…?」
「また暮らせたらいいなって、お母さんと毎日祈ってたんだよ」
菊ちゃんは泣きながら私の手を握る。
「A、これからは自分のために幸せになっていいんだからね」
「お姉ちゃんは誰よりも幸せになれるよ。なってくれないと、お母さんもあたしも、天国に行けないよ」
ふたりは私のことをぎゅっと抱きしめて、優しく背中を押してくれた。
その手は陽だまりのように、暖かかった。
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福寿草の花言葉
幸せを招く 永遠の幸福
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妹の名前は菊乃ちゃんです。
タイミングを逃して物語後半にして新しく名付けてしまいました、スミマセン…
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玲羅(プロフ) - すごく面白いです!体調に気をつけて、更新頑張ってください! (4月19日 11時) (レス) id: cb3a3c8e5d (このIDを非表示/違反報告)
萌娜(プロフ) - かるぱすさん» コメントありがとうございます^^そう言っていただけると本当に嬉しいです…!もう少しで完結予定なので、最後までよろしくお願いします♡ (4月3日 11時) (レス) id: 8beddeaf96 (このIDを非表示/違反報告)
かるぱす - 初コメ失礼します!この作品すごく面白いです!更新待ってます! (3月31日 0時) (レス) @page22 id: 11d8e78453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:萌娜 | 作成日時:2024年2月29日 17時