19.攫って ページ21
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「本当にお世話になりました」
屋敷の門の前で、最後に皆にお礼を言って手を振ると、門の外には不死川さんが立っていた。
「不死川さん…」
「…店まで送る」
「これから鬼狩りの任務があると聞きました…何度も迷惑はかけられません」
「俺が送ってやりたいと思ったから送る。嫌なら別だけどなァ」
「…いえ、嬉しいです」
自分の頬が緩んでいるのがわかる。
…蝶屋敷で過ごした時間は楽しかった。
皆温かくて、優しくて。あんなに素敵な人たちが鬼に食われて死んでしまうかもしれないなんて、考えたくなかった。
そして、欲に塗れたあの世界へ戻りたくないとも思ってしまった。
あの店には本当によくしてもらってる。春や楼主様たちが心配だと思うし、会いたいとも思う。
けれど、宝物になるくらい、屋敷で過ごした時間は幸せだった。
怪我が痛んで辛い時もあったけど、あの温かい空間は遊女であることを忘れて、普通の町娘になれた気がした。
再び吉原へ足を踏み入れれば、私は遊女として、まやかしの一夜限りの夢を売る。
「…」
思わず一瞬暗くなった私の顔に気付いたのか、俯いて顔にかかった髪の毛を不死川さんが耳に避けてくれた。
「…
「…え、」
「そんな悲しそうな顔して…本当は帰したくねェ」
「…」
ふたりの間に流れる、僅かな沈黙。
そんなこと出来ないと、してはいけない事だと分かっているのに。
「…悪ィ、困らせたな。……冗談だ」
「いいえ…ありがとうございます」
私は上手く笑えていないと思う。
でも、不死川さんの気遣いが嬉しかった。
「…」
不死川さんは私の顔を見て、また苦しそうに俯いた。
「俺は…───」
もう大門の前まで来てしまった。
門の中の
震えて聞こえた不死川さんの声。
「……やっぱなんでもねェ。また行く」
その続きは、聞けなかった。
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玲羅(プロフ) - すごく面白いです！体調に気をつけて、更新頑張ってください！ (4月19日 11時) (
レス) id: cb3a3c8e5d (このIDを非表示/違反報告)
萌娜(プロフ) - かるぱすさん» コメントありがとうございます＾＾そう言っていただけると本当に嬉しいです…！もう少しで完結予定なので、最後までよろしくお願いします♡ (4月3日 11時) (レス) id: 8beddeaf96 (このIDを非表示/違反報告)
かるぱす - 初コメ失礼します！この作品すごく面白いです！更新待ってます！ (3月31日 0時) (レス) @page22 id: 11d8e78453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：萌娜
| 作成日時：2024年2月29日 17時
