14.優しい夢 ページ16
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優しい夢を見ていた。
家族で、穏やかに暮らす夢。
「───A、」
お母さんが私の名前を呼んで、温かい手で頬を撫でてくれる夢。
「お姉ちゃん!」
妹が私に抱きついて、無邪気な笑顔を向けてくれる夢。
立派な簪や着物がなくても、豪華な食事をすることができなくても、ただ家族皆で些細なことで笑い合えたら幸せなのに。
全て夢だと分かっているのに、もうこのままずっと目覚めたくない。
…けれど、誰かに私の腕を後ろから引っ張られる。
なぜか後ろを振り向くことはできなくて、誰なのかは分からない。
…誰かが、私を夢から目覚めさせようとしている。
「A、」
あなたは…誰なの…?
「お願いだ…」
更に強い力で腕が引かれる。
「…A、待ってくれてる人がいるわ」
「え…?」
夢の中のお母さんは、私の背中をそっと押した。
その瞬間に夢から覚めて、ゆっくりと目を開く。
見慣れない天井。ここは、どこ…?
「…A…っ!?」
私の視界に広がったのは───不死川さんだった。
夢で腕を引っ張っていたのは、あなただった。
私の手は不死川さんに握られていて、体温が伝わる。
「…不死川さん…」
そう名前を呼べば、不死川さんは私の手を強く握って、自分の額に私の手を持っていった。
「…二度と鬼が来ねェようにするって言ったのに、お前にこんな怪我までさせちまった…」
「不死川さんのせいじゃありません…それに、ちゃんと生きています」
私の顔を見て一度瞬きすると、手を握ったまま、不死川さんは俯いてしまった。
「…泣いてるんですか…?」
不死川さんの顔はよく見えないけれど、一度鼻をすすった音が聞こえた。
「……泣いてねェ…」
不死川さんの瞼にそっと触れる。
私を心配してくれてるのが嬉しくて、私も涙が出そうになる。
「お前、5日も目を覚まさねェから…」
「…不死川さんが何度も名前を呼んでくれたから、起きることができました」
あなたは私を何度だって救ってくれる。
自然と頬が緩むと、あなたも眉を下げて、鋭い目を細めて微笑んでくれた。
この顔を見ると、やっぱり胸がきゅっとする。
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玲羅(プロフ) - すごく面白いです!体調に気をつけて、更新頑張ってください! (4月19日 11時) (レス) id: cb3a3c8e5d (このIDを非表示/違反報告)
萌娜(プロフ) - かるぱすさん» コメントありがとうございます^^そう言っていただけると本当に嬉しいです…!もう少しで完結予定なので、最後までよろしくお願いします♡ (4月3日 11時) (レス) id: 8beddeaf96 (このIDを非表示/違反報告)
かるぱす - 初コメ失礼します!この作品すごく面白いです!更新待ってます! (3月31日 0時) (レス) @page22 id: 11d8e78453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:萌娜 | 作成日時:2024年2月29日 17時