11.音柱 ページ13
-
怖い。死にたくない。
意識はないはずなのに、頭の中でぐるぐると同じことを考えてしまう。
そして、思い浮かぶのは不死川さんの顔。
…もっと沢山、あなたの話を聞きたかった。もっとあなたのことを知りたかった。
あなたと一緒に、外の世界を歩いてみたかった。一度でいいから、叶わない夢を見たかった。
温かい傷だらけの手で、頭を撫でて欲しかった。
頭の中で何度も独りで我儘を言っている。
目に涙ばかりが溜まる。
その時聞こえた───耳をつんざく程の爆発音。
「───お前がAか?」
「…誰…?」
知らない人の声。
気付けば帯から切り離されて地面に倒れていた。
うっすらと目を開けると、左目に変わったお化粧をした、目立つ額当てをしている男の人が私の顔を覗き込んでいた。
「離れたところに運んでやるから、大人しくしてろよ」
横抱きにされて、少し離れた別の建物の中に寝かせてくれた。
「…どうして私のことを知ってるんですか…?」
「荻本屋の千早は派手に有名だからな」
「でも、Aって…」
その人は宇髄さんといって、鬼殺隊の柱だと教えてくれた。
「不死川だよ」
「…不死川さん…?」
どうして、不死川さんが…?
「ここでの任務があることを偶然会った時に話したら、血相変えて"Aを死なせるな"って言ってきたんだよ」
「…」
「不死川は別の任務に行ってる。まさかアイツ、遊郭に縁があるとはねぇ…しかもお相手は天下の千早花魁だったとは」
「…?それは、勘違いです…」
「にしても、やっぱり派手に綺麗で色っぽいな!俺の4人目の嫁になって欲しいぜ」
「…嫁…?」
「いやダメだな、不死川に殺されちまう。…よし、俺は戦いに戻るから。鬼に見つからないように気をつけろ」
宇髄さんは目に見えない速さで鬼の元へと飛んで行った。
…不死川さんが、宇髄さんにそんなことを言ったなんて。
こんな大変な状況なのに、あなたが私のことを考えてくれていたことが嬉しくて、涙が滲んで目が熱くなった。
-
242人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玲羅(プロフ) - すごく面白いです!体調に気をつけて、更新頑張ってください! (4月19日 11時) (レス) id: cb3a3c8e5d (このIDを非表示/違反報告)
萌娜(プロフ) - かるぱすさん» コメントありがとうございます^^そう言っていただけると本当に嬉しいです…!もう少しで完結予定なので、最後までよろしくお願いします♡ (4月3日 11時) (レス) id: 8beddeaf96 (このIDを非表示/違反報告)
かるぱす - 初コメ失礼します!この作品すごく面白いです!更新待ってます! (3月31日 0時) (レス) @page22 id: 11d8e78453 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:萌娜 | 作成日時:2024年2月29日 17時