10.遊郭に棲む鬼 ページ12
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───夜が深くなって、お客さんは寝静まる。
私たちはお客さんが起きたら一緒に起きるという暗黙の了解があるため、いつも朝までぐっすり寝ることは出来ない。
今日も同じように、ただ目を瞑って横になっていた。
お客さんの起きる気配はない。
なんとなく外の風に当たりたくて、体を起こして廊下に出て、ぼんやりと景色を眺めていた。
そこに───音もなく、人の影が目の前に現れた。
「───そろそろアンタを喰ってやろうと思ってね」
「…え?」
「ねぇ?千早」
…この顔は…京極屋の、蕨姫…?
数字が刻まれた目、鋭い牙と爪、重力に逆らってうねうねと動いてる長い帯。
───鬼だ。蕨姫は最初から鬼だったの…?
怖い。体が恐怖で固まって動けない。
確かに、ここ最近他の店でも足抜けや謎の死が多かった。物騒だなとは思っていた。全部、蕨姫のせいだった?
『まきをさんを最近見かけないって…他の姉さんがこそこそ話していたでありんす…』
昼間の春との会話を思い出す。もしかして、まきをさんも蕨姫に…?春や他の
いつも道中で見る、普段の着物姿じゃない。
鬼の姿をしてる。鬼狩りじゃなくても、とてつもない殺気を肌で感じる。この凄まじい気配に圧倒される。
今度こそ、本当に殺される。
「本っ当にアンタはずっと喰いたいと思ってたの。いつ喰ってやろうかって考えてた。うざいけど、アンタはこの吉原の中でも特に美しいからね」
蕨姫の帯が伸びてきて、私は避けることなんて出来ずに縛り上げられる。
そのまま体は帯に取り込まれ始めて、体の感覚が無くなっていく。
…死にたくない。助けて。
「…不死川さん、」
あなたの名前を零して、私は意識を手放した。
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玲羅(プロフ) - すごく面白いです!体調に気をつけて、更新頑張ってください! (4月19日 11時) (レス) id: cb3a3c8e5d (このIDを非表示/違反報告)
萌娜(プロフ) - かるぱすさん» コメントありがとうございます^^そう言っていただけると本当に嬉しいです…!もう少しで完結予定なので、最後までよろしくお願いします♡ (4月3日 11時) (レス) id: 8beddeaf96 (このIDを非表示/違反報告)
かるぱす - 初コメ失礼します!この作品すごく面白いです!更新待ってます! (3月31日 0時) (レス) @page22 id: 11d8e78453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:萌娜 | 作成日時:2024年2月29日 17時