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09.変わった新入り ページ11

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数日後。







「千早花魁、新しく変な子が入ったんでありんすよぉ」

「変な子?」







禿の春が道中の支度を手伝ってくれている最中、そんなことを言い出した。








「綺麗なお顔なのに、体がむきむきってしてて…一瞬声を聞きんしたけど、男の子…みたいで、」

「なんて子なの?」

「猪子さん…でありんす」

「変わった名前ね…」









花魁になると私室をもらえて、大部屋で過ごすことはなくなるから、新入りの子や目立たない子のことはあまり知る機会がない。








「…それに、まきをさんを最近見かけないって…他の姉さんがこそこそ話していたでありんす…」

「こら、春。あんまりそういうことは大きい声で話しちゃいけないのよ?」









まきをさんは少し前に店に入った遊女で、新入りさんなのに大人に見えたから印象に残ってる。それに髪の毛が特徴的だった。









足抜けと言って、借金を返し終わらずに逃げ出す遊女がたまにいる。それは重罪で、もし見つかれば大変なことになる。









…気の弱そうな人ではなかったから、足抜けなんてしないと思うけど…
彼女のことはほとんど何も知らないから、予想することしかできない。









支度が終わって、すぐに花魁道中を控えていた私は最後まで話を聞けずに店の外に出ていった。










呼び出しという特別な花魁は、張見世で格子の内側に座って客を呼び寄せることはしない。









馴染みのお客さんに指名され、呼び出しを受けた時に花魁道中で迎えに行く。









シャンシャンと錫杖(しゃくじょう)金輪(かなわ)が打ち鳴らされる音。私の周りを囲んで歩く遊女や遣手。










もったいぶるように緩慢な足取りは、外八文字といわれる吉原の伝統に則った歩き方。










千早が人前に現れると、ざわめきが波紋のように広がる。









「来たぞ、荻本屋の千早花魁だ」

傾城(けいせい)と呼ばれるにふさわしい」









見慣れた景色。こうやって注目を浴びていると、自分はやはり吉原の遊女で、ここからは逃げられないと言われている気分になる。









…なんだか今日は、悪いように考えてしまう。最近忙しかったから、疲れてるのかな。









道の先を見つめながら、一歩ずつ踏み出していく。








───まさか、このいつも見ていた景色が崩れるなんて、夢にも思わなかった。




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※傾城 色香で城が傾く程の美女という意味です。

10.遊郭に棲む鬼→←08.過去と名前



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玲羅(プロフ) - すごく面白いです!体調に気をつけて、更新頑張ってください! (4月19日 11時) (レス) id: cb3a3c8e5d (このIDを非表示/違反報告)
萌娜(プロフ) - かるぱすさん» コメントありがとうございます^^そう言っていただけると本当に嬉しいです…!もう少しで完結予定なので、最後までよろしくお願いします♡ (4月3日 11時) (レス) id: 8beddeaf96 (このIDを非表示/違反報告)
かるぱす - 初コメ失礼します!この作品すごく面白いです!更新待ってます! (3月31日 0時) (レス) @page22 id: 11d8e78453 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:萌娜 | 作成日時:2024年2月29日 17時

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