【鬼滅の刃】人斬り少女と蜘蛛の鬼 弐

88、嵐の前の ページ44

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汽車が横転して辺りに砂埃が立つ。

その中から伊之助がこちらに向かって走ってきた。



「三太郎共！大丈夫か？」

「私は大丈夫。炭治郎は大丈夫？」



「ああ…ありがとう伊之助、A。俺は大丈夫だから他の乗客を助けてやってくれ…。頸の近くにいた運転手は…」

「あいつ死んでもいいと思う！」

「よくないよ…」




なんだかんだ炭治郎の頼みにより伊之助は言う通りに運転手を助けに行った。





「Aも俺のことはいいから乗客を助けてやってくれ…」

「炭治郎の手当てしたらね」



私は着ていた羽織を脱いで炭治郎の腹部に巻きつける。
こんなんでなんとかなるとは思わないけどないよりはマシでしょ。
これって呼吸でなんとかならないのかな？私は呼吸が使えないからよく分からないけど。



　
「炭治郎、呼吸で止血ってできないの？」

「俺はやったことないから分からないけど……たぶんできると思う」


「できるぞ！」



いきなり隣から大声。隣を見ればそこには煉獄がいつのまにか立っていた。
煉獄…生きてたのか。そりゃそうか、柱だもんね。そう簡単に死ぬ訳ないか。まあ私の初任務に柱が死なれても困るから良かった良かった。
でもなんだろう…なーんか忘れてる気がする。




「煉獄さん…」

「うむ！炭治郎の止血は俺に任せてAは他の乗客を助けに行ってやってくれ」

「分かりました」

「それと……Aは単独で今まで何をしていたのか後で説明するように」


「……はい」



うわ〜そうだった〜。
説明するつったって敵に捕まって今まで寝てましたなんて言える訳がない。アホにも程がある。
鬼から情報仕入れてあわよくば累の元まで連れてってもらうつもりだったのに計画丸潰れだよ。アホを通り越してもはや笑える。


それにせっかくの初任務なのに特に何も得られず終わってしまった…。
下弦の情報は得られたけど……



『＿＿下弦は解体したんだ。皆あの方に殺されたんだよ。』



あの十二鬼月が言っていた言葉が頭の中にこだまする。

いやいやいや。累は死んでない。累は生きてる。私は累を信じるんだ。

頭を左右に振り嫌な考えを打ち消す。
気を取り直して乗客を安全な場所に避難させる。怪我人は多いが命に別状はないから大丈夫だろう。

虚しく終わる私の初任務…。
寝てただけで終わった私の初任務…。
もう一匹くらい十二鬼月が空から落ちてこないかなあ、なんてそんなことを思った時。


ドォンッッ


激しい轟音が辺りに響いた。


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