参拾漆ノ型─お前はここで、俺達が倒す ページ42
目を見て開くと、そこは夜の闇に包まれた森
そうだ俺は、走馬灯を見ていたんだ
ああ、走馬灯か
俺は本当に死ぬのか
玄樹にも、
紫耀にも、廉にも、海人にも、岸くんにも会えずに
一人で…
せめて、最後に玄樹に会いたかった…
『恋の呼吸 陸ノ型 猫足恋風』
ジャキンッ!!
淡い桃色の斬撃が、美しく空気の筋を通る
いや、空気の筋を斬る
今、俺の真上で起きたこの光景は、
あの最終選別で見たもの
ただ、斬られたものが鬼ではなく岩
岩は砕けちって、上手に俺の頭を避けて落ちた
まさか…
「神宮寺っ!」
「………………玄樹?」
これは、幻なのだろうか
いいや、現実だ
俺の目の前には、玄樹が片手に刃を握り、立っていた
「神宮寺…」
「げん…」
パンッ!
玄樹の名を呼ぼうとすると、強烈な平手打ちを食らった
頬がジンジンと痛む
「何やってんの馬鹿っ!
なんで僕から離れたの!?なんで一人で死のうとしたの!?
僕らはどんな時でも一緒だよ
たとえそれが、死ぬときでもね」
「玄樹…」
「感動の再開は、ここまででもいいか?」
あの空気をずんっと重たくする声
玄樹はそんなこと全く気にせず、獅子の様な目付きで鬼を睨み付けた
「よくも神宮寺を殺そうとしたね
神宮寺の血鬼術を解いて
卑怯だよ、上弦のクセに」
「生意気な女だな
でも良いだろう。どうせお前らは死ぬんだしな」
「わっ」
体がグラッとなる
血鬼術が解かれて体が動くようになったんだ
俺が立ち上がると、玄樹はすぐに駆け寄ってきて、俺の手を力強く握った
「僕のこと、女って言ったね?
確かに僕は可愛い。僕は自分のことを東京で一番可愛いって思ってる
だけど、女って言われるのは気に入らない」
玄樹は俺の手をさらに強く握った
「お前は此処で、俺達に首を斬られ、灰となって散る」
玄樹は鬼に、刃を向けた
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作者名:秋麗司 | 作成日時:2023年7月4日 18時