蛇柱と天柱弐 (ページ47)

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名前は知らない。ページ47

――ガラガラ。

古い戸が開く。

うちは古い古い本屋。

ずっと昔から受け継がれたらしい。

「・・・。」

来る人は少ないけど最近割と頻繫に来る客がいる。

週に２,３回は来てくれる。

そして私と少しだけお話してくれる。

「・・・爬虫類の本はあるか。」

「あ、あると思います。探してみますね。」

「・・・。」

その人はこくりと頷いてびっしりと並んだ本に目をやる。

ここ最近はずっと来てくれる人。

その度に違う本を探していて。

本が好きなのだろうか。

「あ、ありました。二十冊程ありますけど、どれにします・・？」

「・・・いい。全部貰う。いくらだね。」

「こ、こんなにですか！？有難うございます・・・！」

凄いな、お金持ちなのかな。

それとも、爬虫類が好きなのかな。

首に蛇巻いてるしなぁ。

その人は、重そうな本を、いとも簡単に持ち上げた。

あんなに細いのに、そんな力があるのか。

あの人を見ると、いつも吃驚する。

面白い人だ。

あんなに退屈だった日々を忘れるほど。

いつもいつ来てくれるのかを楽しみにしている。

「・・・あの、次は、何時来れますか・・？」

口が滑る。

この言い方だと私がこの人を好いているみたいじゃないか。

いや、あながち間違いじゃない。

毎日の楽しみはこの人が来ることなのは事実。

この人の色の違う両目に見つめられるのが好きなことも・・、

・・・これもまた事実である。

「・・・お前は、何時来て欲しい。」

「・・え？」

「俺に何時来てほしいんだと訊いている。」

「そ、それは・・。」

「あっ、明日。明日また来てくれますか？」

「・・分かった。明日、また来る。」

そう言ってその人は店を出た。

私の頭の中は混乱状態。

なんてことを言い出すんだこの野郎。口め。

ぺらぺら変なこと言いやがって。

あの人が良い人でよかった。

普通の人だったらここ数日顔を見る程度の女に

「何時来れるか」なんて問われると気色悪いよな。

待て待て。

それだとあの人が普通じゃないおかしな人みたいじゃないか。

・・いや、こんな古い本屋に来る人だ。

変わり者かも。

じゃあそこで働いてる私は何なんだって話だが。

そういえば

今日もまた、名前を訊き忘れた。

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仁です(・ω・)

番外編みたいな感覚で楽しんでいただければ・・！

このお話もちょいちょい更新させてください(・ω・)

個人的に結構気に入っていたお話だったので笑