本当は 弐。 ページ42
【有一郎Side】
『怪我でもしたらどうするんですか!ここ二階ですよ!?落ちたら怪我しますから、ホント馬鹿なことしないでください!』
「A。……目、閉じろ」
『へっ!?あ、あの、先輩っ……!』
Aは顔を真っ赤にして、固く目を瞑った。
……どうして俺は、今まで気付けなかったんだろう。どんな表情を見ても、こんなに好きだなと思うのに。
今はこんなにも、Aが可愛くて仕方ないのに。
『……いたっ!』
「ちゃんと痛覚あるだろ。夢じゃないからな」
『あ、そういうこと……てっきり、キスでもされるのかと思いました』
「しない」
頬を膨らませて、ぷいとそっぽを向くA。俺は更に距離を詰めて――Aにキスをした。
『……!?』
「――どうせするなら、不意打ちの方がいいだろ」
『っ……先輩、それは反則です……』
「A。……今まで、たくさん傷付けてごめんな。でもその分、絶対に大切にする。だから俺の彼女になってほしい。……嫌か?」
『馬鹿。……そんなの、嬉しいに決まってます!』
そう言って顔一面の笑顔を浮かべたAは、これまで見た顔の中で一番優しい顔だった。
「そういえば……Aは、何で俺のこと好きになったんだ?」
『先輩は覚えてないと思いますけど、入学式の時に助けてもらったんです。具合が悪かった私を保健室まで運んでくれました』
「でも……もし助けたのが俺じゃなくて他の奴だったら、Aは俺を好きになってなかっただろ?」
一つ選択を間違えたら、今こうして付き合えていない。Aと出会えていなかったかもしれない。
無一郎とのこともあったし、俺には軽いトラウマだった。
『まぁ、そうかもしれませんね』
「……だよな」
『でも、“もしも”の話なんてしたって仕方なくないですか?いま私が好きなのは有一郎先輩だし、いくら想像の話をしたって過去なんて変わらないし。そんなこと気にするより、これからの話をしましょうよ。楽しいこと、たくさん考えましょう』
「…………」
やっぱり、お前は強いな。
本当は弱いところもあるけど、芯はすごく強い。
俺が今まで囚われていた考えを、いとも容易く打ち砕いてしまった。
「……ありがとな」
『覚悟してくださいね。私、一度捕まえたら二度と離しませんから』
「お互い様だろ」
俺はこの日、人生で初めて“両想い”になった。
そしてそれから、十年が経った。
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【夜桜】・しーちゃん・ - わぁ…!もう感動したぁ…! (2020年8月14日 13時) (レス) id: 031218a0d7 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 少し嫉妬しそう。ぷくー (2020年4月17日 0時) (レス) id: 5656ed0b69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆん - うふふうふふふふふふニヤニヤニヤにや (2020年4月9日 15時) (レス) id: 76b4a4436f (このIDを非表示/違反報告)
飴(プロフ) - やばいっ!無一郎君も好きだけど、有一郎君派に行きそう/// (2020年4月6日 21時) (レス) id: 2eacc9981a (このIDを非表示/違反報告)
レイン(プロフ) - 連載お疲れ様でした!最後凄い泣けました……(´;ω;`)これからも頑張って下さい! (2020年4月6日 21時) (レス) id: da75407877 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:karin | 作成日時:2020年2月14日 21時