検索窓
今日:12 hit、昨日:21 hit、合計:112,127 hit

本当は 弐。 ページ42

【有一郎Side】

『怪我でもしたらどうするんですか!ここ二階ですよ!?落ちたら怪我しますから、ホント馬鹿なことしないでください!』

「A。……目、閉じろ」

『へっ!?あ、あの、先輩っ……!』

Aは顔を真っ赤にして、固く目を瞑った。

……どうして俺は、今まで気付けなかったんだろう。どんな表情を見ても、こんなに好きだなと思うのに。

今はこんなにも、Aが可愛くて仕方ないのに。

『……いたっ!』

「ちゃんと痛覚あるだろ。夢じゃないからな」

『あ、そういうこと……てっきり、キスでもされるのかと思いました』

「しない」

頬を膨らませて、ぷいとそっぽを向くA。俺は更に距離を詰めて――Aにキスをした。

『……!?』

「――どうせするなら、不意打ちの方がいいだろ」

『っ……先輩、それは反則です……』

「A。……今まで、たくさん傷付けてごめんな。でもその分、絶対に大切にする。だから俺の彼女になってほしい。……嫌か?」

『馬鹿。……そんなの、嬉しいに決まってます!』

そう言って顔一面の笑顔を浮かべたAは、これまで見た顔の中で一番優しい顔だった。

「そういえば……Aは、何で俺のこと好きになったんだ?」

『先輩は覚えてないと思いますけど、入学式の時に助けてもらったんです。具合が悪かった私を保健室まで運んでくれました』

「でも……もし助けたのが俺じゃなくて他の奴だったら、Aは俺を好きになってなかっただろ?」

一つ選択を間違えたら、今こうして付き合えていない。Aと出会えていなかったかもしれない。

無一郎とのこともあったし、俺には軽いトラウマだった。

『まぁ、そうかもしれませんね』

「……だよな」

『でも、“もしも”の話なんてしたって仕方なくないですか?いま私が好きなのは有一郎先輩だし、いくら想像の話をしたって過去なんて変わらないし。そんなこと気にするより、これからの話をしましょうよ。楽しいこと、たくさん考えましょう』

「…………」

やっぱり、お前は強いな。

本当は弱いところもあるけど、芯はすごく強い。

俺が今まで囚われていた考えを、いとも容易く打ち砕いてしまった。

「……ありがとな」

『覚悟してくださいね。私、一度捕まえたら二度と離しませんから』

「お互い様だろ」

俺はこの日、人生で初めて“両想い”になった。

そしてそれから、十年が経った。

幸せに。→←本当は 壱。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (235 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
248人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

【夜桜】・しーちゃん・ - わぁ…!もう感動したぁ…! (2020年8月14日 13時) (レス) id: 031218a0d7 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 少し嫉妬しそう。ぷくー (2020年4月17日 0時) (レス) id: 5656ed0b69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆん - うふふうふふふふふふニヤニヤニヤにや (2020年4月9日 15時) (レス) id: 76b4a4436f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - やばいっ!無一郎君も好きだけど、有一郎君派に行きそう/// (2020年4月6日 21時) (レス) id: 2eacc9981a (このIDを非表示/違反報告)
レイン(プロフ) - 連載お疲れ様でした!最後凄い泣けました……(´;ω;`)これからも頑張って下さい! (2020年4月6日 21時) (レス) id: da75407877 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:karin | 作成日時:2020年2月14日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。