時透双子が甘すぎる【キメツ学園】 (ページ39)

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行ってくる。ページ39

【有一郞Side】

最低だ。

最後の最後までAを傷付けて、俺のために気を遣わせて、最終的には泣かせた。

あんなに優しい人を、ズタズタに傷付けてしまった。

Aに別れを告げられてから一ヶ月が経ち、進級の季節になった。春休みが始まって今日で三日だけど、Aの泣き顔ばかりが頭に浮かんで離れない。

俺の前ではいつも笑顔だった。

今思い出せば、随分と無理をさせたと思う。元々Aはそこまで強い人間では無いはずなのに、強がらせていたのは俺だ。

『有一郞先輩！』

見てきたのは笑顔ばかりで、悲しそうな顔なんて見てこなかった。必ずお前を好きになるなどと言っておきながら、俺は一度だって“A”を見ていなかった。

前まではしつこいくらいに来ていたLINEも、ここ最近はピタリと止んだ。携帯はうんともすんとも言わない。

いつしかあいつの着信を待っている自分がいることに気が付いて、自分の最低さを何度も思い知る。

「兄さん。……なんかここ最近、元気無くない？」

「そう、かもな……」

俺はこんなにもAに支えられていた。

“A”

“ちょっといいか？”

LINEを送っては、既読が付く前に送信を取り消す。この作業も、数えきれないほど繰り返した。

「なんか、食も細くなってるよ。本当に大丈夫なの？」

「大丈夫だから気にすんなよ。それより無一郎、お前最近Aとはどうなんだよ」

「どうって……。別に普通だけど。この間、一緒に買い物に行ったくらい」

「ふーん……」

いつの間にか、Aとのことを聞いてもそこまで傷付かなくなってきた。無理矢理忘れようとしていた頃に比べて、余程楽だ。

もしかすると俺には、もうあまり未練が無いのかもしれない。

「それより、兄さんは？」

「何の話だよ」

「最近は全然聞かないけど。……もう一人の“A”の話」

「……俺、そんなにあいつの話してたか？」

「ほぼ毎日してたよ。愚痴みたいな喋り方するくせに、いつもどこか嬉しそうだったし。てっきり、有一郞はその子が好きなんだと思ってた」

「俺があいつを好き？……いや、そんなわけないだろ」

「最近は全然聞かないし、何かあったんでしょ？でもまぁ……その顔だと、上手くいってないみたいだけど」

いや、だって俺が好きなのは、幼なじみの“A”の方で……。

『――先輩！』

だけど思い出すのは、あいつのことばかりだ。

「……ちょっと、行ってくる」

「うん、行ってらっしゃい。……兄さん、頑張って」