出会い。 ページ28
【有一郎Side】
その女は、突然俺の前に現れた。
夏休みが終わり、二人とは別々に登校し始めた頃、校門近くで突然声をかけられた。
『こんにちは、有一郎先輩!中等部一年の浅野Aといいます。私、先輩が好きです!』
「……A?」
思わず反応してしまったのは、ついこの間振られたばかりの彼女と同じ名前だったから。
『はい!桐宮先輩と同じ名前です。いきなりですけど有一郎先輩、私と付き合いませんか?』
「嫌だ」
『ゔっ、バッサリですね……。でもいいです。私、諦めませんから!先輩のこと好きですから!』
正直、告白されるなんて珍しいことじゃなかった。だから気にも留めなかったし、このまま終わっていれば彼女のことはすっかり忘れていたと思う。
それでも俺が浅野Aのことを覚えていたのは、翌日から毎日話しかけられたからだ。
『有一郎先輩!お昼一緒に食べませんか?』
「うるさい。俺がお前と食べる理由なんてないだろ」
『先輩!次の授業体育ですよね?頑張ってください!』
「……本当うるさい」
浅野Aは、いくら俺が冷たくあしらおうともめげずに話しかけてきた。最初のうちは迷惑だとしか思っていなかったものの、一ヶ月も続くと段々不思議に思えてきた。
なんでアイツは俺に構ってくるんだ?
俺が好きだって言ってたけど、なんで?
日に日に気になっていったので、聞いてみることにした。
「お前、なんでそんなに俺に付きまとうんだよ」
『先輩が好きだからですよ』
「俺、お前とは接点ないよな?」
『そうですね』
「じゃあなんでだよ。お前に好きになられるような覚えはないし、別に無一郎でもいいだろ」
つい無一郎の名前を出したのは、Aに振られたときの心の傷がまだ癒えていなかったからだろう。
小さい頃から、ずっと好きだった。何年間も心の拠り所にしていたものが突然崩れ去ったのだから、そうなるのも仕方がないとは思う。
『んー……。なんでって言われても、有一郎先輩と無一郎先輩は違う人じゃないですか。私は有一郎先輩が好きなんです』
「俺はお前なんて好きじゃない」
『分かってますよ。だから、絶対に振り向かせてみせます』
「失恋したばっかなんだよ」
『……それも、知ってます』
「だから構うな」
『それは嫌です』
変なやつだ。俺がこいつを好きになるなんてありえないのに。
「じゃあ、勝手にしろ」
『本当ですか!?』
俺はまだ、浅野Aが俺に構ってくる本当の意味を知らなかった。
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【夜桜】・しーちゃん・ - わぁ…!もう感動したぁ…! (2020年8月14日 13時) (レス) id: 031218a0d7 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 少し嫉妬しそう。ぷくー (2020年4月17日 0時) (レス) id: 5656ed0b69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆん - うふふうふふふふふふニヤニヤニヤにや (2020年4月9日 15時) (レス) id: 76b4a4436f (このIDを非表示/違反報告)
飴(プロフ) - やばいっ!無一郎君も好きだけど、有一郎君派に行きそう/// (2020年4月6日 21時) (レス) id: 2eacc9981a (このIDを非表示/違反報告)
レイン(プロフ) - 連載お疲れ様でした!最後凄い泣けました……(´;ω;`)これからも頑張って下さい! (2020年4月6日 21時) (レス) id: da75407877 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:karin | 作成日時:2020年2月14日 21時