時透双子が甘すぎる【キメツ学園】 (ページ23)

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花火大会　弐。ページ23

歩き始めて十数分で、私の両手は食べ物に塞がれた。お祭りって誘惑が多いから、気を付けないとすぐにお金がなくってしまう。

「なんか安心した。AはAだよね、うん」

『え、どういうこと？』

「何でもないから気にしなくていいぞ。それより、りんご飴の屋台あったけど買わなくていいのか？」

『買う買う！え～っと……。あれ？』

後ろを振り向くと、いつの間にか二人はいなくなっていた。え、もしかしてはぐれた！？

『無一郎くん、有一郎くん、どこー！？』

まずい。本気で迷子になったらしい。

中学二年生にもなって迷子とか、ありえない。馬鹿にも程があるでしょう私……。

携帯を見ると電源が切れていた。充電してくればよかったな。もう、救いようがないよ。

『……なんか、馬鹿みたいだな』

浮かれて調子に乗って、挙げ句の果には迷子になって二人を困らせる。いくらお洒落しようとも性格までは変えられないし、空回ってるし。

……なんか、すごく惨めだ。

「――A。見つけた」

『……え』

振り向くと、汗だくの有一郎くんが立っていた。息切れしているし、たくさん走り回って探してくれたのだろう。

「……馬鹿A！携帯くらい出ろよ！どれだけ心配したと思ってるんだよ、暗いから誘拐とかされても気付かれないんだぞ！」

『ご、ごめんなさい』

こんなに怒られたのは初めてだ。返す言葉もない、中二にもなって迷子なんて。

「……とにかく、無事でよかった」

『本当にごめんなさい』

「いや……。きっと無一郎なら、真っ先に抱きしめてやるんだろうな」

『なんでそこで無一郎くんが出てくるの？私、有一郎くんに見つけてもらえて助かったよ。嬉しかったよ。……ありがとう、有一郎くん』

心配かけてしまったのは、本当に悪かったと思う。でも無一郎くんと比べなくても、十分過ぎる程助けられた。

「なぁ、A」

『ん？』

「――俺じゃ駄目な理由って、何なんだ？」

『……え？』

いつになく真剣な顔でそんなことを言うから、私も思わず身構えてしまう。何を言ってるんだろう。

「他の女子は皆、俺と無一郎の区別も付かないだろ。逆を返せば俺たちは似てるってことだ。じゃあ、なんでAは無一郎が好きなんだ？なんで俺じゃ……無一郎の代わりにはなれないんだ？」

有一郎くんは本気で私のことを好きでいてくれてるんだ。

……正直言うと、私にもわからない。でも一つだけ、確かなことがある。

『有一郎くん、私ね』

私は話し始めた。