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私は煉獄さんに見送られ試験会場に向かっていた。
別れ際に煉獄さんが酷く心配してくるのもあって無駄に緊張している。師範が弟子を不安にさせるなんてどういう事なんだ。昨日は最終選別など朝飯前だ！とかなんとか言っていたくせに。
緊張をほぐそうと煉獄さんに言われた言葉を必死に思い返しながら歩いた。
『 まずは己の限界を知りそれを理解しそして受け入れろ！強くなれるかなれないかを考えるのではなく強くなるためには今何ができるかそれだけを考えること 』
『 顔が暗いぞどうした！不安で怖気付いたのか！
最終選別に行くことを認めたのはこの俺だぞ。その意味が分かるだろう？ 』
煉獄さんはいつも私の暗くなった心の奥を照らしてくれる。
師範が煉獄さんで本当に良かった。
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「A！！！」
突然背後から聞こえたその声に
心臓がどくんと高鳴った
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＿＿＿煉獄さんだ
足を止めて後ろを振り返ると
ドンッと大きな衝撃を受け後ろに倒れそうになった。
前にもこんな事があった..ってそうじゃなくて
「どうされましたか？！」
煉獄さんは何も言わずに私を抱き締めてきた。
どくんどくんと鼓動が加速する。しめつける力が強く骨が折れてしまいそう。
「俺は大事なことはすぐに伝えないと気がすまないタイプなのだ！聞いてくれ！」
私の額に煉獄さんの人差し指が置かれた。
大事なことってなんだろう。
「俺は、君が継子で本当に良かったと思っている。
気づいていないかもしれないが
君の日々精進を重ね剣術を極めたいと願う向上心や、弱音を一切吐かず淡々と鍛錬に取り組む姿は俺の意欲をも向上させ、俺自身の成長にも繋がる。
いつの間にかそれが敬いの気持ちへと変わり今ではかけがえのない存在となった。
俺は君が好きで好きでたまらない。君が必要なんだ。
だから、必ず、俺の所に戻って来なさい」
「....っ」
何故そんな大事なことをこんな直前になって言うんですか。
例えようのない喜びと突き上げるような嬉しさが込み上げてきて、涙をぐっとこらえる。
煉獄さんはそっと私に口づけをしてきた。
「では七日後にまた会おう！ああそれと
−−君の好きなところは不器用で愛らしいところだ。
「...？」
そう言って煉獄さんは風のようにその場を立ち去った。
人差し指を置かれた額が熱い。煉獄さんの想いが私の心を満たしていく。
最終選別を絶対に成し遂げる。そう強く心に誓った。
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作者名：もち
| 作成日時：2020年11月16日 19時
