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屋敷を出た瞬間
ずっと堪えていた涙が一気に溢れる。
ここまで心が痛むのは生まれて初めて。
告白して振られた訳でもないのに
なんでこんなに落ち込んでいるんだろう。
ため息と同時にさっきの光景をまた思い出してしまった。
煉獄さんが女性とあんなに楽しそうに話している姿は初めて見た。
綺麗な顔立ちで愛嬌もあってとても女性らしい人だった。
煉獄さんのあの慌てっぷりを見る限りあの人と何かあったに違いない。
煉獄さんの年齢なら恋愛経験の一つや二つはしてるだろうし、もちろんそれ以上の事だって。
「..............」
嫌な想像ばかりしてしまう。
泣いている所を蝶屋敷の人達に見られるわけにはいかないので、気づかれないように正面門ではなく裏門からそっと屋敷に入った。
昨日煉獄さんの看病を終えて屋敷に戻った際に
正式に煉獄さんの継子になった事をしのぶさんに伝えた。
しのぶさんはとても喜んでくれて余計無駄な心配をかけたくない。
「........疲れた」
朝からまともな休憩もないまま訓練をして
やっと終わったかと思えば予想外な事が起こって心身ともに限界だ。
私はお風呂から上がると髪も乾かさずにそのまま寝てしまった。
「.....ん」
時計を見ると日付が変わっていた。
思いのほか寝てしまっていたらしい。
水を飲みに屋敷の廊下を歩いていると
突然鎹鴉が肩に止まった。
「....びっ、くりした。どうしましたか?」
『...........』
「........?」
鎹鴉は何も言わずにどこかへ飛んで行ってしまった。
誰の鎹鴉だったんだろう。
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作者名:もち | 作成日時:2020年11月16日 19時