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─── ・・・全集中の呼吸 弐ノ型 高速斬り
しかし最後の力を振り絞って首を落としたまでは良かった。
が、戦闘中に負傷した脇腹からの出血がひどく、私は出口付近に倒れたまま意識を朦朧とさせていた。
この出血量大丈夫?と不安になりながらも、時間が過ぎるのをひたすら待つ。
今ここに鬼が現れてももう戦うことはできないからあとは運に身を任せるしかない。
「?!」
しかし、鬼、現る。
ひぃ、
嘘でしょ。
あとちょっとなのに…!
どんだけ運ないの!?勘弁して!!
私はド根性でその場に立ち上がると、素早く鬼から距離を取った。
ひゅう、ひゅうと喉が鳴る。息が苦しい。頭もくらくらする。
大丈夫。落ち着け。
あと少し経てば夜が明ける。
鬼の首を斬れなくても時間稼ぎができればなんとかなる。
大丈夫。炎柱様に借りたこの刀がきっと私を守ってくれるはず。これは炎柱様が最終選別の時に使っていた刀だ。いわば最強の最強の刃。
刀には人の魂が宿ると聞くし、ここまでこれたのもきっとこの刀のおかげだ。最後の最後に死んでたまるものか。
「……待ってて下さい、炎柱さま」
──Aがそう呟いた時、
離れた場所で、静かに精神統一をする煉獄の目が、すうっと開かれた。
迎えに行かなくては。
直感でそう思った。外はまだ暗い。
おそらく今屋敷を出ても早く着きすぎてしまう。
だが、この妙な胸騒ぎと早く彼女に会いたいという気持ちを抑えることができなかった。
「どうか無事でいてくれ」
煉獄は羽織を肩にかけると、速やかに屋敷を飛び出した。
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作者名:もち | 作成日時:2023年5月10日 0時