隣の席の蜂楽くん

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「ねえねえ、水川さんって彼氏とかいるの？」

やら

「蜂楽の隣は色々大変だからがんばってね！」


などと休み時間にクラスの子たちに言われたのに対して、いないよー、大丈夫だよー、と返す。


授業開始のチャイムが近づくと、私の周りに集まっていた子たちはパラパラと自分の席につき出す。



「次の授業の先生ね、めちゃくちゃ怖いから。絶対忘れ物したり寝たりしちゃダメだよ！」


って最後まで残ってた子にそう言われた。大丈夫、授業中寝たことなんかないし、昨日の夜ちゃんと準備したもん。そう思いながら鞄の中を探るけれど、


＿＿＿あれ、あれ。教科書がない。


どれだけ探しても見当たらない。よく見ると、教科書によく似た大きさの本が代わりに入っていた。間違えちゃったんだ。

その瞬間、さっきクラスの子に言われたあの言葉を思い出す。めちゃくちゃ怖い先生。睡眠忘れ物だめ絶対。


＿＿＿転校初日からこんなのじゃ、絶対目をつけられちゃう…！


終わった……って思ったその瞬間＿＿＿




「あり、もしかして、教科書忘れちった？」




声の主は、先ほどまで寝ていたはずの蜂楽くん。今度はキョトンとした顔でこちらを見ている。


「うん、忘れちゃったみたい…怒られるよね、絶対」

それから、んー、と考えるように顎に手を当てた彼は、何かを思いついたようにパッと表情を明るくさせてこう言った。

「じゃー、俺のあげる！」

聞き間違いかと思い、え？と彼の方を見るととびきりの笑顔で

「俺、どうせいっつも寝てるからだいじょーぶ♪」

と返される。

「蜂楽くんが怒られちゃうからいいよ！」

と言っても

「慣れっこだから平気だよ〜」


でも……と遠慮する私を見かねたのか、彼は、人1人分の間が空いていた、私と自分の机の間の距離をガコンっと一気に縮め


「じゃあ一緒に見よ！それならいいっしょ？」


そう言って太陽のように笑ったのだった。

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