今日も彼女は想うだけ【煉獄杏寿郎】

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「乙葉！！」


放課後、美術室に向かっていると
先生が勢いよくこちらに向かって走ってきた。


「先生！教師が廊下を走っちゃダメでしょう！」

「す、すまない！」

「そんなに慌てて…何か用ですか？」


いつもの先生だ。



「用はない！君が元気か心配でな」



思いがけない言葉に
嬉しくて顔がニヤけそう。


というかニヤけてる。



「……ふふ、超元気です！」

「それは良かった！これから帰るところか？」

「いえ……それがですね。
宇髄先生が美術室に来いとかなんとか」

「……宇髄が？
まぁどうせ大した用事じゃないだろう！
行かなくてよろしい！！！」

「……でも一言くらいは言わないと」

「なら俺から言っといてやろう」

「大丈夫です！
もう美術室すぐそこなので。

じゃあまた明日…さようなら」



先生が私の心配をしてくれた。
今日はぐっすり寝れそう。

なんて事を考えながら歩き出すと
身体が後ろに引き寄せられる感覚に
思わず足が止まる。


ゆっくりと振り返れば先生が私の体操着を引っ張っていた。



「乙葉」



今まで聞いた事のない低い声。

しんと廊下が静まり返る中
うるさく音を立てる私の心音が
先生に聞こえていないか心配で


何か言わなきゃ。


そう思った時、先生の顔が鼻先にあった。



「美術室は行かなくていいから
その代わりに俺の手伝いをしてくれないか」

「………」



初めてこんな近くで先生の顔を見た。

ふわっと先生の匂いが、鼻を掠める。
ビー玉みたいに綺麗な瞳が私に向けられている。


近い。とにかく近い。


こういう状況になったら
どうしたらいいのかなんて

まだ検索していない。





「返事は？」




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