今日も彼女は想うだけ【煉獄杏寿郎】

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ギュッと瞼を閉じて涙を落としてから

小さく息を吸って、先生を見た。



「なぜ泣いているんだ？」

「……最近涙腺が弱くて困っています」

「なぜ泣いているのかと聞いている」



私の手首を掴んだまま先生も立ち上がって
一歩距離が近づいた。

力強くて手首から感じる先生の体温は
とても温かかった。





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「すまない」



なんで謝るの。



「生徒、ましてや受験生の君にこのような相談事を持ちかけるなんて、教師としてあってはならない事だと分かってはいたんだが」

「一生懸命に励ましてくれる君を見る度に、
君の優しさが嬉しくて心地よくて、つい甘えすぎてしまった」

「負担をかけさせてしまってすまなかった。
もう今後一切、君に相談するのはやめる。」




────だから泣かないでくれ、乙葉





はっきりと聞こえた“生徒”と“教師”という言葉。

分かってた。

先生が私を生徒としか見ていないことくらい。





分かってました。

先生が超のつくほど鈍感だってことくらい。





「…………負担だなんて思ってないですよ」

「実は私の恋、うまくいってなくて」



先生と屋上階段で話すのが
今日で最後だなんて、そんなの嫌だ。

いつかくるそれを
まだ受け入れる準備なんてできていなくて。



「前向きな先生を見ていたら
私も先生みたいに頑張らなきゃって
そう思ったらなんだか泣けてきたというか」

「それは本当か？」

「はい！だからこれからも先生の相談に乗ります！」






今日もまた私の中に大きな矛盾が生まれてしまった。





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天窓から差し込む日差しに
階段が反射してキラキラと埃が舞う中

ニコリと笑った先生が私の手首をそっと離した。



「そんなに悩んでいたなら
何故俺に相談しないんだ？！」

「ふふ、先生に言っても分からないことです」

「む……」

「でも一つ相談というか質問してもいいですか？」

「もちろんだ！！」



ニコッと笑って
今か今かと私の言葉を待っている先生。

その瞳が綺麗すぎてまた目の奥が熱くなる。









ねぇ、先生。









「好きな人に好きな人がいたら、先生はどうしますか？」




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