逃がさないと言われましても 2【煉獄杏寿郎】

　52 ページ4

.






「········！！！」



後ろから炎柱様の声がしたかと思えば、振り向く間もなく肩を抱き寄せられた。




「こちらの方は？」




これはまずい非常にまずい。
炎柱様に過去の話は一切していないし知られたくもないどうしよう。せっかくのお花見なのになんでこんな事になるんだ····なんでこのタイミングで···





「····ああえっと、昔····お世話になった方で」




そう言ってチラリと狐さんを見ると、空気を読んでくれたのか「俺はあっちにいるから、もしタイミングが合えば。」と、手をひらひら振りながら立ち去って行った。







｢··········｣







「と、とりあえず座りましょう！」

「うむ！」



隣り合わせに座り、持ってきたお茶やおしぼりを準備する。炎柱様は恐ろしいほど満面の笑みを浮かべていて、思わずアハハ...と苦笑いをしてしまった。




「····えと、これ、おしぼりですどうぞ！今お茶もいれますね！」

「これはおしぼりじゃなくて箸だな！」

「·····！失礼しました！！」


お茶をいれながらなんて言って誤魔化そうか必死に考える。

師範から私の過去をどこまで聞いているかは分からないけど、きっとそこまで深くは聞いていないはず。





「····で、話を戻すがあの男に世話になったと言っていたな？何の世話になったんだ？」



怖い、怖すぎる。威厳が半端ない。

どこからどう見ても笑顔なのに、寒気がしてしまうほど声のトーンが低くて、変な汗がじわりと浮かんできた。何が何でも話題を変えなくては····


返答を誤れば即お花見終了だ。


「昔よく遊んでもらって····」


「ほう？その割には随分歳が離れているようだが」

.

　53→←　51

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す