57.選択 ページ22
ジミンの話を聞いて少し。
また記憶を呼び起こした。
……オッパ、オッパ、……ユンギ、オッパ。
彼はわたしに沢山の機械を繋いで。そしてわたしをいつも眠らせた。
それが何をしているのか幼いわたしには分からなかったし外に出た事のないわたしはその行為に違和感すら覚えなかった。
ジミンを恨めないのは。ジミンさんを、憎いと思い切れないのは。
ジミンさんと出会う前のわたしは幸福では無かったからだと思う。
ジミンさんはそんなわたしをあのラボから引き上げて、甘い、幸福の飴を口に入れてくれた。
ジミンさんは幸せだった、と言ってくれたけど、それはわたしも一緒。
ジミンさんと出会う前のわたしは、彼と同じで愛なんて知らなかった。
それはまぎれもない事実。
こんなに泣いているジミンさんなんて初めてだ。
胸に閉じ込め、押し殺す様に泣くジミンさんの頭を撫でて「わたしも、わたしも幸福でした」とまた、乾いていた涙が溢れそうになる。
ジミンさんと会えて、もう。泣きたくなんてないのに。
彼には笑っていてほしいし、一緒に笑っていたいのに。
ジミンさんは何度も何度も「ごめんね」と繰り返す。
「こんな言い方、よくないけど君は幸せなんて、知らない方が良かったんだ。君が君でいる限り一生苦しむ」
「それでももう、わたしはジミンさんと出会わない人世なんて嫌です」
「そんなの結果論だ」
「ジミンさん!」
「ごめ……ん……」
「わたし達の幸せだった時間をなかった方がよかったなんて言わないで下さい……」
「ごめんね、ごめん」
やっぱりありはしないのかもしれない。希望なんて。
谷底に落ちたわたし達はどの道を選んでも、どこを歩いても。
そこには永遠と闇が続くだけ。
わたし達は、空を飛べないから。
だったら、もう、選択肢は1つしかない。
「ジミンさん……」
わたし達が、唯一。幸せになる方法。
甘い、甘い、選択。
わたしはジミンさんに耳打ちした。
1362人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すぴやな(プロフ) - 蛇足ですが、もしよければ安室奈美恵さんのLove Storyという曲をお聴きになってみてください。雰囲気も歌詞も、私の思うこの二人の世界にとても合っていると感じました。曲だけで見てもとても心に染みる作品です。コメント連投失礼しました....応援しています。 (2018年8月15日 16時) (レス) id: 55e82045e4 (このIDを非表示/違反報告)
すぴやな(プロフ) - 夢小説で初めて涙腺が緩みました。どちらかと言えば夢小説は苦手だったんですがしろいさんのこの作品を通して感じ方が変わったような気がします。哀しくて寂しくて暖かくて甘い、素敵なふたりの物語を見届けられて幸せです。ありがとうございます。連載お疲れ様でした。 (2018年8月15日 16時) (レス) id: 55e82045e4 (このIDを非表示/違反報告)
イヴ - とても良かったです! (2018年7月8日 14時) (レス) id: 4004b8cd1e (このIDを非表示/違反報告)
seajoongセジュン??(プロフ) - えっ…これは…ハッピー…エン…ド…? (2018年6月23日 12時) (レス) id: a43e5c801b (このIDを非表示/違反報告)
はる - 完結、本当にお疲れ様でした!こんなに感動するお話を読めて良かったです!!胸がドキドキしたりギュッとなったり、、、話の意味が深くていろいろ学べました!!新作も頑張ってください!! この作品が一番好きです!! (2018年6月17日 21時) (レス) id: 877a29c23d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しろい | 作成日時:2018年6月9日 11時