52.崩壊 ページ17
気が付けば、僕は自分でも知らない場所で空を見上げてた。
家にいることが出来なかったから、逃げたんだと思う。
既に箍が外れていた僕は、自分が生きるために沢山人を傷付けた。
金品を奪って、食べ物を買った。
警察に補導されないように定期的に洋服も買った。
死ぬことも考えた事が無かったわけじゃない。
でも、死んで、楽になるのは違うと思った。
僕は生きて、生きてそれで。この痛みと苦しみと死にたいと願う絶望と寄り添わなくてはいけない気がした。
何より、死んで、母さんに会うのが怖かった。
そんな日々を続けていると。
「!?」
初めて、後ろ姿に振り上げた鉄パイプを止められた。
「クソガキ」
俺を睨みつけ、そんな僕を死ぬ直前にまで追いやった男。
……それが。ナムジュンヒョンだった。
どれくらい眠ってたか分からない。
意識を取り戻すとそこはベッドの上で。酷く久し振りに柔らかな場所で眠ったと思った。
「起きたか」
降ってきた声は、まさに僕が助けて、ではなく殺してくれと願うくらいまで追いやった張本人で。
「いつ、人を殺した?」
突然問われたその質問に、純粋に驚く。
「ああ、悪い。俺はキムナムジュン。お前は?」
「…………パク……ジミン……」
「ジミン。それで? 何人殺した?」
ひとり。と言いかけて2人だと答えた。
「理由は」
当たり前だけど初めて。人に両親のことを話した。
口から、後から後から言葉が溢れた。話したくなんて。無いはずなのに。ナムジュン、はそんな不思議な力を持っていた。
「……辛かったな」
話を聞き終わって。何気ない様に。
つぶやく様にそう言ったナムジュンに、「あ、れ……」
目尻を生温かいものが伝った。
それは後から後から堰を切ったように流れ始めて。
あの男を殺して以来。初めて泣いた。
みっともなく。声を上げて。僕は泣いた。
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すぴやな(プロフ) - 蛇足ですが、もしよければ安室奈美恵さんのLove Storyという曲をお聴きになってみてください。雰囲気も歌詞も、私の思うこの二人の世界にとても合っていると感じました。曲だけで見てもとても心に染みる作品です。コメント連投失礼しました....応援しています。 (2018年8月15日 16時) (レス) id: 55e82045e4 (このIDを非表示/違反報告)
すぴやな(プロフ) - 夢小説で初めて涙腺が緩みました。どちらかと言えば夢小説は苦手だったんですがしろいさんのこの作品を通して感じ方が変わったような気がします。哀しくて寂しくて暖かくて甘い、素敵なふたりの物語を見届けられて幸せです。ありがとうございます。連載お疲れ様でした。 (2018年8月15日 16時) (レス) id: 55e82045e4 (このIDを非表示/違反報告)
イヴ - とても良かったです! (2018年7月8日 14時) (レス) id: 4004b8cd1e (このIDを非表示/違反報告)
seajoongセジュン??(プロフ) - えっ…これは…ハッピー…エン…ド…? (2018年6月23日 12時) (レス) id: a43e5c801b (このIDを非表示/違反報告)
はる - 完結、本当にお疲れ様でした!こんなに感動するお話を読めて良かったです!!胸がドキドキしたりギュッとなったり、、、話の意味が深くていろいろ学べました!!新作も頑張ってください!! この作品が一番好きです!! (2018年6月17日 21時) (レス) id: 877a29c23d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろい | 作成日時:2018年6月9日 11時