【skt】フィアンセ (ページ6)

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STORY.６狡い人ページ6

「Aー！」

「わっ…もう殿下、驚かせないで下さいませっ」

再び会えたあの日から、殿下はちょくちょく休憩室へ遊びにくるようになった。
まだ誰にも見られていないからいいものの、大きな声で私を呼ぶときはさすがに肝が冷える。
でも大きく反抗できないのは、彼が懐いている犬のように見えるからだろうか。
尻尾を振っている殿下を想像して一人でクスクス笑っていると、殿下が話し始めた。

「Aは寂しくなかったん？もう3日ぶりやで、3日ぶり！！」

殿下は頬を膨らませながらぷりぷりしているが、そのくらいの頻度でも多い方だと思ってしまう。

「ふふ、殿下が少しでもわたくしを気にかけてくださる時間があるとわかっただけでも十分でございますわ」

「えー、でも俺はAを考えるだけじゃ全然足りへんねんけど」

「…か、揶揄うのはやめて下さいませっ」

「んふふ、照れとるん？かわええ～」

ぐぬぬ…

殿下と攻防を続けていると、廊下から足音が近づいてきていることに気付いた。
しかも、かなりこの部屋から近い位置で響いている。

「っ、殿下！」

「気付いとるわ、そんなもん。でも、ええんやない？俺は困らへんし」

「し、しかしこんなところ見つかったらっ、逢瀬だと＿＿＿」

「＿＿＿思っとるで、俺は。Aはちゃうの？」

「っ…わ、わたくしは………」

ガチャ

「！」

ドアノブが捻られる音が部屋に響いた。
もう無理だ、と目を閉じた瞬間、殿下に引き寄せられる。

「！？」

「失礼しまー…って、殿下！？」

「あ、ごめんなぁ。ちょっとメイド長探しててん」

「メイド長、ですか。良ければ呼んで差し上げましょうか？」

「ほんま！？ありがとう、じゃあお願いするわ」

「承知致しました」

ガチャ

「…もう行ったで、A」

そう言われて、私は殿下から離れた。

「なにむくれとるん？ちゃんと隠しといてあげたんに」

「……殿下と殿下のマントに隠れるなんて、最初から教えて下さればもっと心の準備ができましたのにっ」

「てことは、急に引き寄せられてドキドキしたってこと？」

意地悪い笑顔をたたえて、私を上目遣いに見つめる。

「うっ……」

「んふふ、せっかくのポーカーフェイスが台無しやで、メイドさん。これからは気いつけや」

ドキ

「……殿下は狡いお方ですね」

「なんとでも」

ふふ、とバレないように1人微笑む。

…やっぱり、こういうところが大好きだ。