The Mystery Girl

第59話 ページ19

山田side




桜苗が無事でいてくれれば…







なんて思いは儚く散っていった。






藤ヶ谷に近づくにつれ、見えてきた






桜苗の姿＿＿






俺らは言葉を失った。






横にいた大ちゃんと圭人からは






薄暗い廃工場でもはっきりとわかるような、
大粒の涙が頬をつたっていた。






両隣にいた2人しかわからないけど、






きっと涙を流しているメンバーもいるだろうし、






俺みたいに怒り狂っているメンバーもいるだろう。






俺は感情のまま藤ヶ谷に






「お前何やってんだよ」






いつも以上に冷たい言葉を投げ捨てた。






藤ヶ谷「おいおい、俺はなんもしてねぇよ。どっちかつーと、俺はヒーローさ。」






「ヒーローってのは、人を守るんだよ。…だからヒーローはお前でも…俺でもない。」






正直藤ヶ谷と同じって言うのは本当に嫌だった。






だけど、結局俺は桜苗のことを助けられてない。






俺の中には






一生女を守ることはできない。






そんな考えさえも浮かんでいた。






本当に情けない。






今の俺に桜苗に近づく権利はないかもしれない。






なんて思っているのに、体と気持ちが釣り合わず、






俺は桜苗の方へ駆け寄った。

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